OASIS

セデック・バレ 第二部 虹の橋のOASISのレビュー・感想・評価

4.2
一部、二部二部分かれているので、合わせてこちらに書く。

台湾史上最高額の制作費を掛けた歴史大作。
ウェイ・ダーション監督。
同監督の映画「海角7号、君想う国境の南」より前に企画があったが、その大ヒットを受けて制作が進行した。

1985年の日清戦争締結後、台湾の奥地で暮らすセデック族が、侵略を始めた日本軍に激しい抵抗を示した史実「霧社事件」を基にしている。

「第一部 太陽旗」
集落の頭目の子、モーナ・ルダオの青年期から日本統治下となった35年後までを描く。
事件の発端となったセデック族の宴でのトラブルから、日頃抱いていた抗日感情を爆発させ、日本軍の運動会が行われていた公学校に襲撃するまでが第一部。

「第二部 虹の橋」
先の公学校での戦闘後、大勢の日本軍が徴兵され、さらに親日派のセデック族に懸賞金つきの討伐を命じ、三つ巴の戦闘へと発展していく。
戦闘描写がメイン。

一部と二部を合わせて4時間35分という、腰に大ダメージを受ける可能性ありの上映時間にちょっぴり引き気味だったが、あまりそこらへんは気にならなかった。
一部でドラマを描きつつ二部で派手なバトルと、エンターテイメントの肝がしっかり詰まっていながら史実を描くことも忘れない。

セデック族が唄う歌に様々なメッセージが込められているが、ちょっとその割合が多くて最後の方は飽きてしまった。
いざ闘いが始まるぞという場面でも、大量の死人が出た後でも、酒を飲み高らかに唄いあげる。

死して屍になったあとに天に昇り、「虹の橋」の彼方にあるという英雄が住む場所を守護する事こそが使命と信仰するセデック族を主軸にして、日本軍の残虐さを極力抑えた演出で決して激しい反日的内容にはしていないように思った。
近代的な武器や兵器を惜しみなく使う日本軍に対して、原住民だからこその地の利を生かした戦略で確実に攻めていくセデック族。
圧倒的な武力で制圧されようとも、抗う事を諦めなかったセデック族の中にあったのは日本人が忘れかけていた「武士道」の精神。河原さぶが最後に言っていたこの言葉こそ真意なんだろうか。

一部に比べて二部はあまりにもドラマ部分が薄い気がするが、後半の怒涛の戦闘描写で全て吹っ飛んだ。
かの名作「アポカリプト」を彷彿とさせる、スピード感溢れるカメラワークと畳み掛ける銃撃戦や爆破は圧巻の一言。
ただ、少年がマシンガンぶっ放しながら走り抜けたり、突撃して橋が落とされたのに次のシーンで普通に生きてたりちょっとシュールな場面もあるが。
何しろ題材的に日本で公開されたのが奇跡的なので、観られる事自体が嬉しい。
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