令和時代がもう喪ってしまった自由に溢れ、コンプライアンスをかなぐり捨てた怪作。
プルトニウムを原発から盗み、原爆を手にした理科教師の話。
こんな奇天烈な話を描いた本作だが、数々の70年代を代表する固有名詞を列挙させることにより、そのお伽噺は現実味を帯びてくる…。
太陽の力を盗んだ先は虚無。
国家を転覆させる野望も、莫大な予算を要求する欲望もない。
原爆を手にしたけど、何をしたら良いか分からない。
安保反対のデモや、金に群がる人々を逃走に利用する主人公。
社会に溢れるエネルギーを、ニヒルに冷笑しながら冷え込んだ目で見下ろすジュリーはセクシー。
相対して、社会の忠実な犬として、無骨に彼を追う菅原文太が対比で表現されているのが良い。
ラストで遂に一対一で対決する様は、ファンタジックでエネルギッシュ。
カルト的な人気を博する所以が、ここに伺える。