Hotさんぴん茶

太陽を盗んだ男のHotさんぴん茶のネタバレレビュー・内容・結末

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

主人公は時に適当、時に真面目な普通の先生。割と生徒にも好かれている。でも実は自宅アパートで、こっそり(※)核爆弾を作っていて…。
※生徒に教えてるしもはや途中からこっそりじゃないが…(^-^;

聞くだけだと狂気の犯罪者!?と思えるこの設定。でもこの映画では、そうは見えない。まるでクッキング番組のように、原爆づくりを見せられる。レンジだの茶漉しだの、突然の日常感にはついつい笑ってしまう。

でもこれはあながちフィクションじゃないのかも、とふと空恐ろしくなる瞬間も。日常の延長線上に核爆弾があっても全然おかしくないのでは?「プルトニウムさえ手に入れば」。社会に警鐘を鳴らす社会派な映画だったようにも思う。

でも、それを抜きにしても面白い映画だった。
主人公は気だるい雰囲気の魅力ある俳優で、目が離せない。この俳優含め、全体的にエネルギーがあるんだかないんだかわからない、とても不思議な世界観が醸し出されている。原爆や風船ガムが、それを象徴しているようにも思えた。

恋愛シーンは可愛らしかった。女性の口調や、主人公ののらりくらりっぷりが微笑ましく!素敵なシーンだった。

謎の多い映画でもあった。
特に主人公の心境が謎だった。例えば主人公は、なぜあの菅原文太演じる警官に執着したのか?憧れと反発とがないまぜになった感情がある感じはした。ともかく近づきたかったみたいだ。(それか認めてもらいたかった?)しかし主義主張が曖昧に思えた。そのせいで、最終的に本人が望んだのかも不明な展開に。もはや素直になれない子どもか、それ以前に自分の感情をうまく表現できない子ども、みたいな感じだった。
終盤その警官の死に涙を流す主人公は、痛々しくもあり気の毒でもあり。ほんとは死んでほしくなかったんだろうな…。

…しかしその警官にとってはただただ迷惑な話で。主人公との温度差が切ない。こうなって当たり前なんだけど。

主人公の承認欲求(?)が、周りを巻き込んで本人も追い込んで、結構悲しい展開だった。

後で振り返ると映画始まって、タイトルが出た時すでに「終劇」という盛り上がりが感じられた気がする。効果音といい、タイトルを引き延ばす感じといい。それはラストシーンの爆発=最初のあの爆発だったからなのかな…、と今思う。
そう考えると主人公が終盤「この街はもう終わってるよ」というようなことを言っていたのも、繋がってくるようにも思える。メタ的な発言だったのかな、と。

後を引く映画だった。