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メメントのmatchypotterのレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
3.9
クリストファーノーラン監督。
ここから彼の才能が発揮される道のりが始まる、、、と言って良い作品。

ガイピアース、短期的な記憶を保持できず、数分前のことを忘れてしまう男が、妻を殺した犯人を捜し、復讐を遂げようとする話。

さっきやったこと、今起きてる状況を忘れるほどの症状。
だから常に写真撮ったり、メモしたり。一切記憶に頼れず、自分が残したと思われるその写真やメモを頼りに。

そして、毎回覚えてはいないが、その過去の写真やメモに残る人物との接触で何かを得ながら、何かを忘れながら。

一度に連続して記憶できるのはわずかな時間。
その間に何かの糸口を見つけては何かを残し、次のターンでそのメモや写真を辿り、その続きを、、、。

これを延々と繰り返しながらただただ妻を殺した犯人“ジョンG”を探し出す。

そういう後遺症になる前の記憶は普通にある。
だから、その頃の回想が差し込まれながら、断片的な短期的な記憶を繰り返しながら。

ノーラン、この頃から時間軸や記憶や潜在意識という領域を自在に操っている。この人の頭はいったいどうなっているのか。

この話も、断片的な記憶を積み重ねて動く男の話を、過去の回想や断片的な記憶セットを前後させたり、繋いでみたり、別の記憶セットからアプローチしてみたり。

いつ、どの写真、体のどの部分に、何のメモを残したか、これが彼にとっても観てるこっちにも唯一の手がかり。
それが何を意味するのか、何が正しいのか。

むしろ、記憶は人の思い込みで事実ではないと言う彼が、なるべくその時起きたこと、見聞きした真実を書き留めたメモ。

逆に言えば、彼はそのメモしか信じられず、メモとメモの間に起きた“行間”には感知できない。
彼は誰にでも自分の症状のことを前置きして話すので、それを逆手に取られることも。

唐突なオープニングで始める。それはこの映画の核心っぼいんだけどなんだかよくわからない。

それを、病的な設定を利用して点を少し広げてみたり、まったく別の点を開けてまた別の点に繋げてみたり。

記憶を辿り、巻き戻したり、それが繋がったりの連続だから、同じシーンが何度も何度も出てくる。
そのうち、それ同士が繋がったりする。それが意外な繋がり方をしたりする。

記憶を辿り真実に迫ると思いきや、自らもその事実を受け入れたくない思いと、残っていたはずの記憶に“思い込み”があることにより、歪みを生む。

果たして、彼が行き着く先は。
『メメント』『インセプション』『テネット』。
他にも『ダークナイト』『インターステラー』などもあるが、この記憶と時間軸を操る魔法使い、クリストファーノーラン、健在。

しかし、これは『インセプション』『テネット』に比べたら観やすい。
技巧とエンタメのバランスが高次元。そのノーランの入門編の初期作品。


F:1970
M:119435
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