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メメントのmaiのレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
4.7
映画らしい映画で、新体験かつもしかしたらもう二度と味わえないような貴重体験です。
2回目の鑑賞にして、やっと話が見えてきました。苦笑

妻殺しの犯人を見つける夫レナード(レニー)ですが、彼はたった10分しか記憶が持たず、それ故に体やポラロイドにメモを残していきます。彼の周りには、協力者を名乗るいかにもな人物(テディ、ナタリー)がいます。

物語は真犯人を殺すという、サスペンス?ミステリー?の起承転結の結から始まります。だから、テディが犯人だったんだろうという憶測の元、起承転結の起へと向かっていくのですが、話を10分弱のぶつ切りで遡っていくので「ん?このシーンってどういうこと?」という疑問や謎がどんどんと積み重なっていきます。観客側がレナードを追体験する形です。
結から進んでるわけだから、本来ならばどんどんと謎が解明されてスッキリしていくはずなのに…謎が解明されてもその倍の量の疑問が増えるばかりで、本当に最後の最後までうまくエピソードを繋げられないのです。

最後の最後で、レナードのサニーの話は自分がおかしてしまった過ちを他人の話に置き換えていただけだという衝撃の事実、かつ、彼はすでに復讐を成し遂げているにも関わらず殺しを重ねている(しかも、テディに関しては自らの意思で殺しを決意している)ということも分かり、まさに大どんでん返しが起きるわけです。
結局のところ、彼の症状に疑問を持った妻が彼を試すために、時間をおいて複数回に渡ってインスリン注射をお願いしたために、彼女は死んでしまったのです。そして、その事実に耐えられなかったレナードは、昔自分が見破った保険金詐欺師で独身のサニーに架空の奥さんをでっちあげ、自分と妻の注射をめぐる話を丸々サニーのものにしてしまいます。
妻の死は以前押し入り強盗に入った犯人のせいにし、その犯人を捕まえることを、無意識的にですが、生きがいとして彼はありもしない事実や出来事を心の中にでっち上げて復讐を続けるのです。
最後のテディとのシーンは衝撃的で、この映画の中で唯一純粋?というか真っ直ぐな一生懸命な人物像であったレナードが、実は自分の健忘症を利用して、自分が殺しを行うように仕向けていたというオチでした。それまで、テディによってジミーを殺すように仕向けられ、ナタリーによってドッドを殺すように仕向けられ…彼は健忘症を利用されて殺しの主犯に仕立て上げられていたわけですが、彼自身も自分を利用していたわけです…そこが繋がった瞬間、本当に驚いたし怖さを覚えましたね。

今回、俳優の方々のカメレオンっぷりが見事に効いていて、ナタリーやテディの変貌ぶりもさることながら、レナードのちょっとマヌケっぽい表情や、かと思えば賢さを見せる場面、最後の最後で怒りや嫌悪を示す場面…まさに七変化でした。

クリストファーノーラン監督は時間を操るのが本当に上手くて、途中までは分からないのに、最後の最後で全てを回収しきってしまうそのやり方は誰も真似できないでしょう…。この映画を模倣することすら難しいと思います、まさに唯一無二で、こんなにも上手く映画を作り上げれる人はなかなかいません。
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