タクマ

静かな生活のタクマのレビュー・感想・評価

静かな生活(1995年製作の映画)
3.4
絵本作家を夢見るまーちゃんには障害がある兄のイーヨーがいる。両親が家を空けまーちゃんは父の友人夫婦の力を借りて家を切り盛りしようとするが…
実際に障害を抱えた弟がいる私の感想です。なんていうか…感想を書くのが凄く難しい映画ですねえ。伊丹十三監督作品をマラソンして結構後の方に見始めましたが今までの作風と明らかに違って芸術性に重きをおかれた作品でこれだけなんでこんな作風なんやろうかと思って調べてみたらこの映画には原作があるんですね。途中で発作が起きて倒れたイーヨーに女子高生が暴言を吐く場面が出て来たけど見ていて昔弟が同じ様に発作を起こした時の周りの反応と重なって見ていて辛かったなあ。
この映画で伊丹監督が伝えたかった根本的な事って一歩外に出たら犯罪や偏見にまみれた世界でどうやったら静かに生きれる様になるのかと言う問いなのだろうか?
作中の悪役になる新井が絡んだ事件が物語のキーになるけど彼がこの事件の黒幕だったかは結局わからない。最後の最後でやっぱりこいつはヤバいやつだったんじゃんっていう場面は出てくるけどそれだって世間の偏見にまみれた視線が彼をそんな風に変えたとも取れる訳で。
宮本信子さんが演じる人物が「みんな自分は特別だと思い込んでる」っていう台詞があったけど極論にもならないアホの考えになりますが自分以外の他者がどんな過去でどんな人種でもだからどうなんだそんなん別に何でも良いやろって考えが一番楽にいきて行けるんやろうなと。ただ透明な自分で生きて自分なりに一生懸命人生を歩いて最後は何でもない自分になって死んでいく。そういう生き方が難しいから人生って上手く行かない事の方が多いし生き辛いなあって思っちゃう事が多いんだけども「笑」なんだかんだありながらもまーちゃんとイーヨーはこれからもそんな透明な生き方で静かな人生を歩んで行くんやろなあって思わせられるラストカットはまさに「静かな生活」なわけやけどその裏側にある人生観とか誰にでもある差別感情をひっぺがえされた様な怖さも感じた。
伊丹十三監督の作品では評価はそんなに高くなくかなり影が薄い映画になってしまいましたがどす黒い大人社会とどこまでも純粋なイーヨーの対比を通して自分達なりの静かな生活を考えて見ても良いんじゃないでしょうか?
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