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戦慄の調べのENDOのレビュー・感想・評価

戦慄の調べ(1945年製作の映画)
4.5
原題:二日酔い広場が示す通り狭い空間に押し込められ酩酊する映画。レアード・クリーガーという俳優の存在を初めて知った。人気に火がつく中『レ・ミゼラブル』を蹴ってこちらを演じたらしいが直後アンフェタミン仕様による過度なダイエットのため今作の公開を待たずに31歳で夭折。一人称視点のナイフによる刺殺からぶち上がり退屈なおぼこい恋人には見向きもせず明らかにアバズレであるカンカンを踊る歌手リー・ダーネルに入れ込んでいく様(ダーネルにとってクリーガーは退屈な男でありその音楽的才能のみを絞り尽くす)はファスビンダーすら彷彿とさせる愛の搾取構造!吐き気すら覚える依存から彼女を絞殺(同時に愛猫が車に轢かれ絶命する様が挿入される)してのち『ガイ・フォークス・ナイト(火薬陰謀事件記念日)』の際に人形お焚き上げで堆く積まれた山のてっぺんに死体を放り投げ証拠隠滅!公衆の前で誰にでも気付かれない虚無。余りにやり過ぎな不協和音からの人格交代。自宅に戻り「キティキティキティ」と呼んでみても猫は既に哀しいかな既に他界。ここにファスビンダーの理想とする俳優ジョージ・サンダースが精神科医として絡んでくるんだからもうお腹いっぱい!ガス灯の爺さんが不吉で最高!演奏中止に逆上し『キャリー』のように燃え上がるラストに泣いてしまった。余談だがダーネルはのちに寝煙草による火災で命を落としている。この上なく扇情的なカンカンは映画史に残る!
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