SHOHEI

天国と地獄のSHOHEIのレビュー・感想・評価

天国と地獄(1963年製作の映画)
4.1
英題『High and Low』。貧富の差が引き起こしたある誘拐事件を扱った作品。前半は主人公権藤の邸宅で繰り広げられるほとんどワンシチュエーションの推理サスペンス。資本主義における競争の現実と、誘拐事件との間で板挟みになる裕福層の男の姿が描かれる。対して後半は横浜の下町を舞台に、主犯竹内やそこに住む人々の生活にスポットを当てた社会派ドラマ。下町の暮らしをたっぷり描いているが、やや冗長に感じられるような気もする。竹内が貧しい暮らしを強いられているいきさつも詳細には語られず、犯行に至る説得力に欠けるように感じられるが、それでもこの作品の白眉はやはり前半のサスペンスで、特に特急こだまにおける身代金引き渡しのシーンには息詰まる。人間の光と闇を描いたという意味で、次作赤ひげと対になる一本。
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