たまち

天国と地獄のたまちのネタバレレビュー・内容・結末

天国と地獄(1963年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

・良心の葛藤、情け、警察の捜査サスペンス、重厚なドラマだった。
・本当に逆恨みだけが動機だったなんてと唖然としたけど、無差別殺人に近いものもあるし今も昔もありえない事じゃないんだな。
・ラスト面会で終わるのは非常に後味を残す。地獄に落ちた権藤を見たかったのか?権藤への妬みだけが彼をこの世につないでいたのだろうか。哀しい。


・いつもながらの赤を使った牡丹色の煙の演出。
・画面に二箇所が映り込む演出が好き。
重役と会議している端の川西、夫人の痛切な訴えの手前に考えこむ刑事、主観と客観をさりげなく同時に表現している。
・今回は音楽が少ないがここぞというところで鋭く音が入る。


・権藤のキャラクター造形が美しい。野心もある。良心もある。
・仲代さんやはりかっこいい。ギョロリと動く目、低い声、有能そうな存在感。でも刑事にしては少し軽い…もう少し必死で追い駆けて欲しいような。
正義の側と分かっているから許されているけど、偏向報道のお願いや「誘拐は罪が軽い、泳がせよう(死人が出てしまっているし)」などグレーゾーン踏んでいる
・青木のわかりやすい悲壮感…
・勝四郎(荒井刑事)はいつでも能天気でかわいいね。あの、カバーにもなっている権藤がかばんを握りしめて連絡を待っている後ろで爆睡してるの映っちゃってるね。

・二回目に進一君が消えた時はぞくっとした…
・着々と近づく捜査網、悪事はバレるんだなあと思わざるを得ない。
・印象に残っているのが焼却炉や青線地帯の市井の貧しい人々。多分リアルに描写されているんだろう。特に中毒者たちの迫力がもの凄い。力はないがゾンビのようだ。日本の、横浜にこんな場所があったのか…と空恐ろしい。

※らしい→当時の誘拐罪に対する刑の軽さに対する批判と、徹底的に細部にこだわった推理映画を作りたい、という思いから製作され、1964年の刑法一部改正(身代金目的の略奪<無期または3年以上の懲役>)のきっかけになったという。
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