ROY

スローターハウス5のROYのレビュー・感想・評価

スローターハウス5(1972年製作の映画)
4.3
あの爆撃が私から離れない!!自由に生きる、時と空間を求めてさすらうタイム・マシン放浪者・・・・・・

時は流れない。過去も未来も、昨日も明日も、全ては現在と隣り合わせ。

過去と未来を彷徨い続ける時間放浪者の数奇な運命を描いたSF映画の名作

音楽はグレン・グールドが担当(『Music from Kurt Vonnegut's Slaughterhouse Five』)

自由意志

■STORY
過去や未来に行き来できるビリー・ピルグリム。さまざまな場面を彷徨い続けるビリーにとって、無視したいほど不幸な時間は、ドイツ軍の捕虜として第5屠畜場(スローターハウス5)に収容されたドレスデンで、味方の連合軍による無差別爆撃に遭ったことだった。(U-NEXT)

■NOTE I(DVD裏面より)
原作者自ら、小説よりよいと評したと云う、名匠ジョージ・ロイ・ヒル監督の逸作。

過去や未来に行き来できるビリー・ピルグリム。だが、どの時間にいつ跳躍するかは自由にならず、人生の様々な場面をさ迷い続ける。第二次大戦での悲惨な体験、両親や妻子たちと送る日々、唯一人生き残る飛行機事故、銃撃による自らの死・・・。中でも楽しい時は、異星人に拉致された星で、セクシーな女優と共に過ごす時間。無視したいほど不要な時間は、ドイツ軍の捕虜として“第5屠畜場(スローターハウス5)”に収容されたドレスデンで、味方の連合軍による無差別爆撃に遭ったことだった。

内外にカルト的人気を誇るカート・ヴォネガット・Jr のSF小説を、 『スティング』『明日に向って撃て!』の名匠ジョージ・ロイ・ヒルが忠実に映画化。主人公がその数奇なる運命を、時間の流れにとらわれずモザイクの様に組み上げていく寓話を、斬新で意義深い人生譚に仕上げている。風変わりでいて普遍的でもある挿話を積み重ねて個の人生を物語ると云う意味では、ヒル後年の話題作『ガープの世界』のSF版とも云うべき、注目の一編。

■NOTE II
◯『スローターハウス5』は「作家の映画」というよりもむしろスタッフの「チームワークによる映画」と呼ぶべきだろう。撮影監督にはミロシュ・フォアマンの諸作やリンゼイ・アンダースン監督の『lf...もしも』(68年)で知られるミロスラフ ・オ ンドリチェクが当たり、編集は『俺たちに明日はない--ボニーとクライド』 (アーサー・ペン監督、67年)等の「大胆な編集(ナーヴァス・モンタージュ)」(グールド流に言えば「歯切れのいい編集[スタッカート・エディティング]」)で知られるディーディー・アレン、美術監督はヘンリー・バムステッド (ビリーが入院する病院でビリーの母親の話し相手となる患者エリオット・ローズウォーターの役でこの映画に顔を見せている。)、そして音楽監督にグレン・グールドが起用されている。

◯グレン・グールド:『スローターハウス5』に用いられた音楽は、一般的な用いられ方のように単に映画の中で起こる出来事を強調するだけでなく、そこで起こる事を越えてそれぞれの心理学的局面を描写するように意図的に選択された。18世紀バロック様式のバッハの曲は映画の出来事に対抗し中和させる作用因として、また爆撃による火災で破壊される以前の美しい都市ドレスデンのある種の体現として共に最適であるということが広く認められた。

バッハの協奏曲第5番へ短調のラルゴの部分は実際のところ「ビリーのテーマ」と呼んでさしつかえなかろうと私は考えている。この曲は第二次大戦のさ中、戦闘神経症にかかったビリーがアルデンヌの森をさ迷うオープニング・クレジットと、ビリーがトラルファマドア星の存在に気づく時、地球を離れ宇宙への旅立ちを誘われる時の2つの場面で用いられた。

◯グレン・グールド:ドイツ軍捕虜の到着は協奏曲ニ短調の最後のアレグロの楽章とブランデンブルク協奏曲第四番のプレストの楽章に支えられている。この2曲は貨車から出てくるビリーや他の兵士達がドレスデン駅に集合し、続いてドレスデン市街を行進する一連の場面の間中流れ続ける。

◯グレン・グールド:ゴルトベルク変奏曲の第25変奏はドレスデン炎上シーンを通じて流れる。これらの場面はチェコスロヴァキアで撮影され、新しい鉱山に移るために破壊されることになっていたある町の燃える様が実際に映し出される。

◯グレン・グールド:コラール“Komm, heiliger Geist, Herre Gott”(来たれ、聖霊よ、主なる神よ)はモンタナの子供の誕生(これはトラルファマドア星人達を喜ばせる)の最後の数ショットに流れ、クロージング・クレジットを通じて流れ続ける。

細川晋(1987)「映画『スローターハウス5』の音楽」『グレン・グールド-楽譜を切り裂く孤独のピアニストのエクスタシー』WAVE+ペヨトル工房、p.166-168

■ADDITIONAL NOTES
原作はカート・ヴォネガット・Jrの『Slaughterhouse-Five, or The Children's Crusade: A Duty-Dance With Death』

グレン・グールドの音楽
・オープニング
・夜空を見上げるシーン
・汽車が到着するシーン
・ベッドから窓越しに夜空を見るシーン
・エンディング
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