ボブおじさん

ミストのボブおじさんのレビュー・感想・評価

ミスト(2007年製作の映画)
4.3
小さな町が深い霧に覆われた。霧の中には人間を襲う謎の生物がうごめいており、スーパーに閉じ込められたデビッドらは脱出を試みるが…

「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」でスティーヴン・キングの小説を映像化してきたフランク・ダラボン監督が、三たびキング作品に挑み、原作と異なる衝撃の結末で賛否が分かれた作品である。

前ニ作は非常に評価の高い名作で、キングとダラボンの組み合わせに同様の期待を抱いていた観客をいい意味でも悪い意味でも裏切る作品だった。

まだ見ていない人で衝撃を味わいたい方は、直ぐにこのレビューを閉じて一切の情報を入れずにご覧いただく事をお勧めする。

幸運にも公開時に何の前情報も入れずに映画館でこの衝撃を味わうことができた。

賛否両論あることは理解できるが、自分は予想外のラストに監督にしてやられたと、唸らされた。

映画は冒頭から美しいショットが連続する。嵐による停電で、家族が彼の仕事部屋に集まり窓を眺めていると突然稲妻が光り「THE MIST」のタイトルが浮かぶ。
すぐさま画面をズームアウトさせながら窓枠の中に1枚の絵の様なモノクロームの景色を暗闇に浮かび上がらせる。
まるで、これから始まる悪夢のような出来事を暗示する様な恐ろしくも美しいシーンだ。

だが、画面がこの映画の舞台となるスーパーマーケットに移ると美しいショットは姿を消し、グロテスクで醜悪な場面が続く。

唯一の救いは子を思う親の気持ち。
最初にスーパーを飛び出し、危険を冒して霧の中に消えて行ったのも、子供が家で待っている母親だった。果たして彼女は無事に家へ着けたのか?

観客はこの映画の中で2つの怪物を見ることになる。
ひとつは霧の中に潜む謎の生物。
もうひとつは、群衆心理の恐ろしさ。

つまりデビッドたちは、スーパーの外からと中から別々の怪物に対峙しなければならないのだ!

果たして彼らは洗脳されたカルト集団の中に留まるのか?
それとも危険を承知で外に活路を求めるのか?
彼らの銃口は、どこに向けられるのだろうか?

衝撃のラストに戦慄する!

2008年5月劇場にて鑑賞した映画をDVDにて再視聴。

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ダラボンはスティーヴン・キングが1980年に発表した短編「霧」を読み、衝撃を受け、これを映画化して監督デビューしようと考えていた。
だが、実際に映画化に着手できたのは、「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」を手がけた後。彼が脚本の執筆を開始したのは2004年だった。
キングは本作の結末に衝撃を受け、これを称賛した。

もし仮にこの「ミスト」が彼の監督デビュー作であったなら、彼のキャリアは果たしてどうなっていたであろう?
もしかしたら「ショーシャンクの空に」も「グリーンマイル」も生まれていなかったかもしれない。