Gierck

チェチェンへ アレクサンドラの旅のGierckのレビュー・感想・評価

4.8
アレクサンドル・ソクーロフ監督、アレクサンドル・ブーロフ撮影。
久々に「日陽はしづかに発酵し…」を思い起させる赤茶けた色合いのフィルムが砂漠に囲まれた乾燥地帯であるチェチェンと合っており、「エルミタージュ幻想」「太陽」など初期の作品とはだいぶ異なる作風に離れていったと思っていたところ、思いもよらぬ原点回帰に興奮した公開当時の思いが蘇ってくる。
ただ本作では、ソクーロフ特有のカメラの揺らぎは列車やトラックの揺れとしては表現されているが、どちらかといえばアレクサンドラのヨタヨタした歩きにによって、不安定さが表されているとも言えるかもしれない。

舞台はチェチェン紛争でのロシアのチェチェン基地と思われるが、なぜアレクサンドラなる老女が特別待遇で戦場に向かうことができるのかはいったん保留にしておくにしても、ロシアの典型的な老女に、若いロシア兵が言葉として発することがためらわれる表情を常にし続けているのに対し、アレクサンドラは体格では遥かに上回る兵士たちを臆することなく、睨み返す視線が感動的な映画ともいえる。
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