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その街のこども 劇場版のharu3uのレビュー・感想・評価

その街のこども 劇場版(2010年製作の映画)
4.0
子供時代に阪神・淡路大震災を経験した男女が13年後、1.17前夜の神戸を歩く。

ビフォアシリーズの様な鮮やかな会話劇を邦画で観られるなんて!シンプルなボーイ・ミーツ・ガールものの裏に、理不尽に多くを奪い去っていった震災の傷跡が浮かび上がります。主演は実際に神戸で震災を経験した2人とのこと。被災者の心に刻みこまれた傷の深さをよりリアルに見た気がしました。

私は震災当時まだ幼く、火の海の映像が只々怖くて、ニュースに釘付けの両親にTVを消してくれと泣いたことだけを覚えています。3.11のときも傍観者でした。
そんな自分が本作とどう対峙すれば良いのか。距離感を掴みあぐねたままの鑑賞でしたが、被災者に対する同情を過度に誘う作りを丁寧に回避しつつ、震災をしっかり語り継ごうという姿勢に、誠実さを感じました。

他人の気持ちを全て理解するなんて土台無理だけど、隣を歩き、一緒に誰かに手を振ってくれる人がいることでどれだけ救われるだろう。なんでもない街の風景や窓の灯りに、胸が締め付けられます。
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