ひでぞう

ドッグヴィルのひでぞうのレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
5.0
 大傑作。グレース(キッドマン)の穏やかで、沁み透るような語り口。そして、町の人々が次第に牙を剥きだしてきても、決して抗うことなく、受け入れていく。その姿は、聖女としてあった。それは性的な要求に対してさえそうなのだ。まさに、惜しみなく与えていく。グレースのために、最初に与えられたベッドが、娼婦のローラのものであったことは象徴的だ。娼婦性は最初から刻印されていたのかもしれない。しかし、それは、決して聖女としての在り方を否定するものではない。それはともにあるものなのだ。マグダラの聖マリアを想起すればよく理解される(『奇跡の海』のベスもそうだった)。そして、グレースが惜しみなく与えたからこそ、最後には、惜しみなく奪うのである。これは復讐劇でも何でもない。洗礼をうけた、有島武郎の「愛の表現は惜しみなく与えるだろう。しかし、愛の本体は惜しみなく奪うものだ」ということがスクリーンで見事に描かれた。人生のなかで観るべき1本。
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