アルタイル

ドッグヴィルのアルタイルのネタバレレビュー・内容・結末

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

この映画を観ていると、日常的に出くわす数々のくだらないやり取りを思い出してしまう。家族、友人、職場、どこにでもその世界と住民は存在する。各々の事は棚に上げて、さも自分達は筋が通っていて正しい高等な人間だと言わんばかりに。
あの人は良いけど、あなたは駄目。その理由を問いただしても、相手はしどろもどろ。幼稚さとくだらなさを自認する事になるのではぐらかすしか無い。
「必ずしも必要ではないが、生活を多少改善する雑用」
すごいキーワード出た。
巧みに強制された奉仕の中で安売りされた自分の価値。未来がどうなるかなんてすぐ予測がつく。おまけにトムが自分の思いつきを信じ過ぎなのが馬鹿で怖い。真実を知っていながら弱者に仕立て上げたグレースに全てを押しつける人間も怖い。
しかしながら、グレースの魂胆も理解が難しい。彼女があえて知恵を使うのではなく、代わりに馬鹿を演じたその理由は、社会実験か何かなのだろうか。父親の理論を否定するには暴力は使わない。操作もしない。これは分かる。だけど、愚かな人間をそのままの状態で受け入れるという態度は、確かに人間に対してあまりやらない事なのかもしれない。愚かで救いようのない人間たちの理性を失わせ、綺麗事で飾りたてる事の出来ない動物に戻した時、この世に存在する価値が無いという結論に至るなんて、人間は何て重いものを背負っているのだろう。
アルタイル

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