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ドッグヴィルの福福吉吉のレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
ロッキー山脈近くの町ドッグヴィルは少数の住人が静かに暮らしていた。そんな中、ギャングに追われる女性グレースが町に逃げ込んできた。グレースに出会った作家志望の青年トムはグレースを匿い、彼女を町の住人にしようと動く。彼女は住人に受け入れられるためにあらゆる仕事を請け負うのだが、住人の要望はエスカレートしていき...。

◆感想◆
床に図面を書き、建物の一部のみをセットとして配置するだけの舞台で撮影されており、演劇の舞台のような雰囲気があり目を惹きました。また、ナレーションで各登場人物の心理まで解説しており、この点は観ていて分かりやすいが、俳優陣の演技の良さが判断しにくく感じました。しかし、観ていくうちにこの舞台とナレーションの構成がしっかり馴染んでいって、ストーリーに入り込むことができました。

小さな町ドッグヴィルの住人たちは至って普通の人々であり、静かに暮らしていましたが、そこにグレース(ニコール・キッドマン)が町に入ってきたことにより、拒絶反応を起こします。ギャングに追われ、警察にも失踪者として手配されたこともあり、当然の反応でした。そこで、グレースを匿ったトム(ポール・ベタニー)が町が受け入れるように策を弄します。

本作のキー・マンであるトムは作家志望かつ町の指導者になりたい青年であり、グレースに対して色々と世話を焼くのですが、彼の存在が口だけで実のない行動を起こす人物に見えて仕方がなかったです。トムはグレースに好意を持つのは分かるが、そのわりにグレースがどんな目に遭ってもトムはグレースに話すだけで頼りなく感じました。

一方、グレースはトムの助言をまともに受け、なんでも献身的に行ってしまう人物なのですが、彼女の本心があまり見えないように感じました。どうにも綺麗事を並べるだけの人物にも見えて彼女に感情移入できなかった。町の人々の地味な雰囲気の中で彼女の外見的な華やかさは浮いているように感じました。

ストーリー後半になると、ドッグヴィルの住人たちがグレースに牙を剥き、グレースは悲惨な目に遭います。グレースを奴隷のように扱う住人たちにかつての姿は無くて、人間の感覚の曖昧さや都合の良さを感じました。

ラストはなんとも言えない不思議な感覚でした。当然の報いとも思えるし、グレースを町に入れた結果と考えると哀しくも感じます。

映像の斬新さに惹かれる作品ですが、ストーリーとしては人の道徳心の曖昧さを感じてなかなか面白い作品でした。

鑑賞日:2024年3月5日
鑑賞方法:DVD
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