湿った映像美がストーリーを超えて押し寄せてくる。
思いのすれ違うストーリーは入り組んでいて、登場人物の相関図がないとそれぞれの関係が初めはよくわからない。レスリー・チャン演じるヨディは自分勝手な恋愛をするダメな男だが、一方で母親に捨てられたことで孤独を抱えている。そんな彼に翻弄される2人の女性に翻弄される3人の男性が登場する。振り返ると面白いストーリーではあるけど、それより先に来るのは黄緑がかった青(ウォン・カーウァイ十八番のこの色、なんていう名前?エメラルドか?)で彩られた映像美。だから、初見で観るとストーリーよりそっちが印象に残る。
ダメなキャラクターを漂白するレスリー・チャンの存在感やマギー・チャンの美貌、アンディ・ラウの人間くささなど見どころはたくさんあるが、結局はおいしいところを攫うのは、ストーリーに全く絡まず、ラストシーンしか出てこないトニー・レオンなのがズルい。