ももまま

欲望の翼のももままのネタバレレビュー・内容・結末

欲望の翼(1990年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ウォン・カーウァイの最高傑作。

この映画の魅力を説明するのは難しい。
感覚を感じるものだと思う。
アート写真のように。

生真面目で不器用なのに、気紛れな男に心を奪われてしまう女。
その女の良き相談相手であるかのように振る舞いながら、実は密かに慕い待ち続け、最後は身を滅ぼす男。
女を弄んでいるように見えて、幼少期母親から捨てられたトラウマを抱え破滅に突き進む男。
その男に弄ばれていると分かりながら魅力の虜になり言いなりになってしまう恋多き女。
その女をいくら深く愛しても、愛してもらえない誠実な男。

愛しても報われない。
皆が誰かを深く愛したがっているのに、ことごとく交錯する愛。

そして最後に登場する謎の男。
彼は愛に翻弄される登場人物達とは別世界に生きているように、颯爽と身支度をし優雅に賭博場への扉を開ける。
そう、彼は人生を謳歌しているのだ。
なぜなら彼はまだ深い愛の苦悩に囚われていないから。

映画全編をレトロでムーディーな音楽が彩る。
この映画に結末はなく、いつの世にも繰り返される人生の華やかな縮図が展開されているのである。

この映画に対して不思議な共通感覚を抱く作品が『蜘蛛女のキス』なのだが、なるほどウォン・カーウァイは原作者プイグのファンである。
同様に、ユングも好んでいるのかもしれない。
心に深く入り込む映画である。
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