リンコロシネマ

カンタ!ティモールのリンコロシネマのレビュー・感想・評価

カンタ!ティモール(2012年製作の映画)
4.4
目の前で家族が拷問に遭い惨殺され、娘はレイプされる…それでも相手(敵)を捕らえたならリンチもせず人としての在り方を諭し一切の危害を加えず帰す…そんなこと俺にできるだろうか…号泣しながらスクリーンを凝視。

利権絡みでインドネシアに経済支援を続けた日本が間接的に殺戮の手を貸したことは紛れもない事実なのだが悲惨な東ティモールの人々のことは報道すらされず我々はプロパガンダに踊らされる。目を背けたくなるような事実の報道は金銭で売買され真実など我々に届くわけもない。

豊作を祝い、幸せを喜び、未来を祈る歌はいつしか哀しみと苦痛を伴う歌になり、それでも歌は人々の痛みを和らげる鎮痛剤となり死者を弔う鎮魂歌になる。

独立し苦痛から解放された時の歓喜の歌があり清算するにはあまりに多くの命を失い悲痛な過去を背負いながら生き残る人たちの生きる支えの歌であり希望を歌う。

歌は寄り添う

あまりにも知らなすぎる東ティモールの歴史は1975年からポルトガル、2002年からインドネシアとの独立をめぐる血塗られた闘いの歴史。

自然豊かな島の人々は聖霊の存在を信じ大地を敬い自然と共に生きている。文明への警鐘という安易な言葉では語り尽くせぬ自然に対する奥深い思想。

冒頭の悲惨な状況に対して、、、
独立する際の戦いにおいて、、、
インドネシアに経済的な援助を続けた日本に対して、、、

東ティモールの人々は言う。「悲しみは残るけれど、もう恨んでいない。独立したのだから。インドネシアも日本も、みんな同じ」と…

「みんな同じ」

ギブソンのバッタもんのようなギターをかき鳴らしキラキラした目の子供たちと合唱する歌唄いアレックスのイキイキとした歌は“人はなぜ歌を唄うのか”というひとつの疑問に対するアンサーであった。

映画の公開後しばらくしてアレックスは心臓発作で亡くなってしまった。自身の過去を多く語らなかったらしいが若い頃に受けた拷問などの後遺症によるものかもしれないと…。


ねえ みんな ねえ 大人たち
僕らのあやまちを 大地は知っているよ

と歌われる「ヘイ マルシーラ」。なんて美しい旋律なのだろう。