もとまち

ルチオ・フルチのザ・サイキックのもとまちのレビュー・感想・評価

3.8
オープニング。崖から飛び降りる母親の姿を透視してしまう少女。母親の顔面は尖った岩に何度も衝突して、ぐちゃぐちゃに砕けて血まみれになる。いきなりの入念な顔面破壊にフルチ節が効きまくっているが、本作のゴアシーンはここまで。物語はそこから数十年後に飛び、富豪の妻となった透視能力者の主人公が謎の殺人事件に巻き込まれる様を描く。

ジェニファー・オニールの美貌やイタリアの美しいロケーションを流麗に捉えていくカメラワークが素晴らしい。赤いランプやアラーム式の腕時計といった小道具の数々も印象的で、それが物語の伏線として後半にきちんと機能してくるのも巧い。語り口はゆったりとしていながら上質で、終盤の真相に向けての伏線を丁寧に積み重ねていく。フルチは破綻型のホラー作家と思われがちだが、映像感覚やストーリーテリングにも優れた才能を宿していることが本作から伺える。ただ、如何せん話の進行がスローペース過ぎることと、透視能力を絡めた脚本に突っ込みどころが多すぎる(普通気づくやろ!って展開が山ほど)のが難点。

響き渡る不気味な音色がすべてを示唆するラストシーンが秀逸。某作品はまさかこの終わり方をパクったのではないか!?
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