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壊された5つのカメラ パレスチナ・ビリンの叫びのSariのレビュー・感想・評価

5.0
ヨルダン川西岸地区のビリン村に住むイマード・ブルナントが撮影した、パレスチナ人たちの抵抗運動を記録したドキュメンタリー。

2005年イマードが最初のカメラを買った年。ビリン村では、イスラエルによる分離壁が建設され始め、オリーブ摘みを生業としている村の耕作地の半分以上が奪われることが判明した。イマードらは非暴力の抵抗運動を開始する。知恵を絞った数々の抗議行動に対し、イスラエルによる力ずくの弾圧が開始され、催涙弾や発泡を受け、あるいは兵士の暴力によって次々と破壊されるビリン村。
死がすぐ側にある感覚。罪もない少年や、抵抗運動を共にしてきたイスラエル人活動家の友人が被弾して亡くなる瞬間をもカメラは捉え続ける。
イマード自身も全治2ヶ月の重傷を負い、二度と重労働が出来ない身体になりながら、何度カメラを破壊されても修理をし、撮影をやめない姿は、たとえ自らの命を犠牲にしても暴力に抗い続けることで生きる意味を見いだす、人間の尊厳と生命力を感じさせるのである。

パレスチナ人のイマードとイスラエル人監督のガイ・ダビディとの共同作業によって誕生した作品であるという背景も興味深い。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と様々な宗教が複雑に絡みあう国の価値観や歴史を理解するのは容易ではない。
日本にも様々な問題があるが、暴力や戦争に国境はない。ウクライナ、ガザやパレスチナ問題と向き合うため、再び劇場で再公開する価値があると言えるだろう。
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