ボブおじさん

アルゴのボブおじさんのレビュー・感想・評価

アルゴ(2012年製作の映画)
4.2
1979年のイラン革命を機に起きたテヘランの米国大使館占拠事件で、カナダ大使館にかくまわれていた米大使館員6人を救出した事件をベン・アフレックが監督・製作・主演を務めて映画化した衝撃のサスペンス。2013年のアカデミー賞作品賞や脚色賞、編集賞を受賞した。

事実を基に制作されたドキュメントタッチのサスペンス映画だが、驚いたのはその余りにも奇想天外な脱出方法だ。

CIAの救出のエキスパートであるメンデスは架空のSF映画「アルゴ」のプロデューサーに扮し、大使館員6人をロケ地を探しに来たカナダ人撮影部隊として偽装させ、カナダ政府の支援を得てテヘランからチューリッヒ行きの飛行機に乗せて共に脱出したのだ。

まさに〝事実は小説よりも奇なり〟と誰もが思うような実話だが、当時CIAの関与は極秘にされたため情報解禁されるまで長らく世間に知られることはなかった。

事実を基にしているので全員救出の結果はわかっているが、「アルゴ」の面白さは、そこにたどり着くまでの息つく暇もないスリルに次ぐスリルのつるべ打ちだ。

序盤ではアメリカ大使館襲撃をまるでドキュメンタリーのように映し出し、ウソの映画をでっちあげる荒唐無稽な作戦には、手に汗握る演技と描写で説得力をもたせて、最後6人の大使館員を脱出させるクライマックスへと持っていく演出が見事だ。

それにしても6人の命が懸かった救出で、架空の映画制作をでっち上げるという発想は、日本ではあり得ないだろう。自分自身も、もしこれがフィクションならリアリティがないと一蹴するところだ。

事実を下敷きとした第1級の脱出劇であると同時に、当時映画スターとして低迷していたベン・アフレックの見事な復活劇でもあった。


公開時に劇場で鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。