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高地戦のuyuyuのレビュー・感想・評価

高地戦(2011年製作の映画)
4.5
戦争映画ってほんとーにつらいから近年はあまり見ないようにしているのだが。
やっぱり韓国映画の戦争ものはすごいね。これも大傑作だった。

半島の南北ものはつらい。観ながらいつも、たとえば東日本と西日本がある日突然戦争したら、とか想像しちゃう。同じ民族どうしで殺し合うってどんだけ不条理なの。何万人、何十万人とゴロンゴロンと死んでいった人たち。ゴミのような死体の山。その死んでいったひとたちひとりひとりに名前があって家族がいて生活があって、愛し愛され生きていた人だったんだよっていう。誰かにとって生きていくうえでの希望になってたような、かけがえのない人が国家の大義のせいで虫けらみたいに死んでいく、それが戦争なんだ、ということをあらためて思う。

作中、南の兵士たちも北の兵士たちも、疲れ切っていて、みんな停戦を願っていた。みんな、なんでこんな戦争しなきゃいけないんだよって思っていた。
戦争の大義として、「家族を守るため」だとかって国家は言いくるめようとするわけだけど、そんなんで自分のやってる行為を納得できるような、そんな甘ったるいもんじゃない。「俺たちは敵と戦ってるんじゃない、戦争とたたかってるんだ」とコスは言った。この重み。(かの『事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ』が裸足で逃げ出すようなこの重み。。。。)

戦争映画が作られ続けなければいけない理由は、戦争がいかにクソかってことをしつこく伝え続けていかなければならないってことだ。うっかりすると、戦争を美化したり、戦死を英雄視したり、「これも正義のかたち」だと正当化するほうに流れていくものだ。けれど、そんなことは許さない、戦争はクソであるということを映画人たちは繰り返し示し続けなければいけないと思う。この作品は、その容赦なさを完膚なきまでに突きつけていた。

半島の分断、朝鮮戦争ということでいえば、日本にまったく責任がなかったとは到底いえない。日本は、朝鮮半島を植民地にしたという歴史がある。それはどれだけ正当化しようとしても無理だ。そのことを半島の人たちは許さなくていいし、日本人はその歴史を正しくもっと知り、ネトウヨらのたれ流してるクソな言説を許してはいけない。だから、韓国映画の日帝もの、そして朝鮮戦争ものは、日本人として、韓国映画を愛する者として、心して観なければならないと思っている。

まあ、そんな私の内なる怒りは置いておいて、この作品は娯楽映画としてもすばらしい。部隊の面々の群像劇としてもすごくよくできていた。以下、キャストにキャーキャー言いたい。
シンハギュンすてきーー。もっと見たいーー! コスの演技がいい! なに、こんないい役者だったのー?! 
イジェフンがまだ若い! でもやっぱりすごい存在感! あの演説!あがるー!
リュスンスのよさがもっとも生かされてる!この人はこういう名バイプレイヤーなんだよな。
リュスンリョン! カッコいい。「7番房の奇跡」と同じ人とは思えない。
イダウィ!あの歌泣くしかないやろ。早々に死ぬ予感しかなかった。

とにかく傑作です。
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