たく

情熱のピアニズムのたくのレビュー・感想・評価

情熱のピアニズム(2011年製作の映画)
3.6
身体に障がいを抱えたフランスのピアニストのミシェル・ペトルチアーニの生きざまを描くドキュメンタリー。短い人生の限られた時間を命を燃やし尽くすようにピアノに捧げた彼の姿が克明に刻まれてて、同時に人に対して限りない愛を捧げることで皆から愛されてるのが伝わってきた。監督のマイケル・ラドフォードは「イル・ポスティーノ」を撮った人なんだね。

生まれつき骨が弱いにも関わらず彼のピアノ演奏は指のタッチが強烈で、今にも折れてしまうんじゃないかとハラハラさせる。実際に後半で演奏中に鎖骨や腕や指を骨折するエピソードが出てきて、それでも中断せずに最後まで弾き切るという不屈の精神がやっぱり常人にはできないことだと思った。彼に人気があるのは決して障がい持ちの物珍しさからではなく、演奏そのものが素晴らしいからで、その点は辻井伸行と共通するものを感じる。

ミシェルがサービス精神旺盛で明るく振る舞い、その女好きが高じて次々と相手を変えていくプレイボーイっぷりが清々しくて、インタビューに応じる過去の女性たちが皆んな彼のことを心から愛してたことが分かる。障がいを持ちながらもちゃんと女性を愛して子どももいるのがホーキング博士(「博士と彼女のセオリー」)を思い出した。

ジャズにそれほど思い入れがないので、ミシェルが数々の名だたるミュージシャンと共演してるのを知っても今一つピンとこなかったんだけど、ロリン・マゼールから左手の演奏を褒められたっていうエピソードでさすがに凄いと思った。終盤で流れる晩年の静かな演奏には寂しさを感じたね。
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