すず

荒野の誓いのすずのレビュー・感想・評価

荒野の誓い(2017年製作の映画)
5.0
争いの終わらせ方、争わないための心得

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『悪党に粛清を』『ある決闘 セントヘレナの掟』に続く、ウェスタン・ノワールの第3弾らしいがすべて未見。

予告で家族を殺された奥さんが銃を持っていたので、復讐劇かと思ったが違った。原題[hostiles:敵対者たち]がとてもしっくりくる。相手と向き合い、個人と向き合うロードムービーでした。地味で渋い西部劇ですが、私は好きです。

【何が敵なのか】
インディアン戦争により憎みあっている白人とインディアン。戦争が終わり捕まえたインディアンの長(おさ)一家を居留地へ護送することになった大佐をはじめ、護送する他の隊員、家族を殺されインディアンを憎む女性、インディアンを殺した罪人など、色々な人たちの思いが護送中に描かれる。
家族を殺された女性の序盤の演技はこちらも辛い気持ちになりました。凄味を感じました。[プライベート・ウォー]主演の方なんですね。地元公開決定したのでそちらの作品も楽しみです。敵対者…敵は敵なのか?誰が敵なのか?己の心が敵なのでは?話が進むにつれ原題の持つ意味が色々捉えられる。

【感情がポイント】
大きな争いは個人間ではなく一括りで考えてしまいがち。白人全員が悪いの?インディアン全員が悪いの?護送中にそれぞれが触れ合う優しさや協力せざるを得ない状況に今まで疑わなかった信念、憎しみが揺らぐわけですよ。大佐の葛藤がメインですが大佐より先に答えを出した人に私は涙しました。簡単に出来ることではないし、自分のしてきた罪とも向き合わなきゃいけない。でも変わらない者もいる。綺麗な話じゃないのがこの物語の良いところだと思う。

争いの終わらせ方は
赦すこと、罪を認めること

争わないための心得は
相手を知ること、認めること

私はこの映画からこのメッセージを受け取りました。日韓や米中など国同士が緊迫している今だからとても響きました。

だけど、変わらない者がいるのも事実。リアリティがあって、憎しみ、殺し合うことからは何も得られず、失われていくばかり。虚しさを感じる。
それでも希望が持てるラスト良かったです。
重い作品にも感じますが、余韻を感じることができる作品です。

【風刺と希望】
冒頭のあの言葉…

アメリカの魂は孤独で禁欲的で人殺しだ
いまだに和らがぬ―D.H.ロレンス

これがアメリカの本質か?アメリカ製作で自国の風刺、鋭いなとも思ったが、ラストまで観ると違うとわかった。このままでいいのか!同じ道を辿るのではなく平和への道へ前進しよう!これは自虐の映画ではなく希望に溢れた映画なんだ。製作者の願いを強く感じた。

【マイナスポイントが見当たらない】
難しい題材ながら感情移入しやすいのは脚本のおかげ。
綺麗なものと汚れたものの対比にもとれる「土地」と「人間」。美しい自然風景が良い。木漏れ日の中を馬で歩くシーンが綺麗だった。あの木漏れ日の中に立ってみたい。撮影監督は日本人のマサノブ・タカヤナギさんという方らしい。海外で活躍されている日本人を見つけると嬉しいですね。あーどうしよう…良かった点しか出てこない(笑)…こりゃ満点つけるしかないわ💮💯

パンフレット欲しかったのに売ってなかったのが悔やまれる😂
すず

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