Shelby

SHAME シェイムのShelbyのレビュー・感想・評価

SHAME シェイム(2011年製作の映画)
3.2
ブランドンはニューヨークで知識労働者として働くハンサムな男性。仕事はできる。仲間とも冗談交じりに自然な会話をすることもできる。そして、ただいるだけで女性の目を引く男。しかし、誰とも決して深い人間関係は結ばない。その欲望はただただセックスに関することだけ。恋人は作らず、売春婦や行きずりの女性との行為だけを求める。会社のPCも自宅のPCもアダルトサイトの履歴にあふれている。

欲望というよりも、まるで何かに追い立てられるような衝動のようにも思える。
彼は何故それほどにセックスを求めざるを得ないのか? 物語の謎は、やがて一人の女性の登場により動き出す。
その女性とは彼の妹シシー。 説明的なセリフを排除し、モノローグさえも排除する。観る者は映し出される行動から推測することしかできない。

アイルランド出身の彼はどんな家庭で育ち、どんな風に成長したのか。 彼が妹をしつように避けようとする理由は、何も語られない。ただ、おそらく彼の恥ずべき人生の象徴は、妹との何かの出来事にあったのではないか? 妹が彼を避けようとしないのは、彼女が物ごころつく前の出来事を示唆しているのかもしれない。
いったいこのアイルランドの少年は、どんな子供時代を生きたのだろうか。 まるで自らを傷つけるようにセックスにのめりこむ彼は、まるで自らを罰するかのように、「薄汚い」セックスしかできないのかもしれない。 親に存在を否定された子供が、『生きていてはいけない』という制約を無意識の内に刷り込まれ、自傷行為を衝動的に繰り返すように。
果たして彼は『幸せになってはいけない』という制約を受けた子供だったのかもしれない。

何も語られない物語の中で、私たちはただそんな風に想像することしかできない。 願わくば多くの不幸せな子供だった大人たちが、幸せな道を選ぶこともできるのだと、自らを信じることができますように。
Shelby

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