まや

バッファロー’66のまやのネタバレレビュー・内容・結末

バッファロー’66(1998年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

名作が映画館で観られて嬉しい。映画館で観るとやっぱり違うなと思うし、すごく楽しめた。恋愛映画すごくたくさん観てるけど、かなり現代的なテーマを孕んだ切り口の面白い作品でとても良かった。

主人公の男が刑務所から出てくるところから物語は始まる。寒空の下、トイレを探し回るも故障していたり、ジロジロ見られたりとなかなか用を足せない。10年ぶりに家に電話すると母親はアメフトの試合ばかり見ていてろくに話にならない。そんななか、前から嘘をついていた自分の現状(エリートで素晴らしい奥さんがいる)について、問い詰められ、家に来るなら嫁も連れてこいと言われる。イラついた彼は連れて行くと言って電話を切ってしまう。電話を切った後に、電話代を貸してくれた女を誘拐し、怒鳴り散らかして車を出させて...。

本作は前半は主人公ビリーの家族背景や、彼自身のキャラクター性が語られていき、後半で彼が刑務所に入ることになった原因である人物を殺しに行こうとすることが描かれる。

前半の家族像だが、すごく最悪な家庭環境だなと思った。ケチですぐ怒鳴り、自分の思う通りにしたい父親と、アメフトにずっと夢中で人の話なんてまるで聞かない母親。要は自分優先な人に育てられたビリーはそのためか、人との距離感がうまく掴めていない感じがした。こんな酷い親なのに律儀に手紙出すところから、やっぱり子供は無条件に親には愛して欲しいと思うものなのかなと悲しくなった。

そんな彼が出会ったクリスティーナ・リッチ演じるレイラ。彼女は誘拐されてビリーの両親を騙すために、偽の妻を演じることとなるが、家族や彼の抱えるものなどに触れるうちに惹かれて行く。この2人の物語も同時並行的に進んでいく。

レイラが距離近いと触るな!と言い、女性が苦手そうなビリーが何とも良かった。特に2人での車のシーンでレイラがビリーに好意を見せるところから、この2人の物語がより親密な感じが出てきて特に面白くなってくる。2人でホテルに入ってからは最高だった。まだお互いのことを知らないけどちょっと惹かれあってる感じが観ていてワクワクした。

ビリーが実は女性との付き合いの経験がなく、学生時代のマドンナをずっと思っている。(本当は悪女。なぜこういう女だと男の人は見抜けないのか...)とても繊細な人物だと、徐々に芯に迫って行く。そこからのお風呂のシーンはもう本当に純粋な子供なビリーが可愛いし、ベッドのシーンとかそのぎこちなさが最高だなと思った。徐々に近づいていき、恐る恐るキスするシーン好きだな〜!そのあとレイラに抱きつくのが良い。通じ合った瞬間だし、ちゃんと眠れるのって安心しきってる証拠で愛だな〜と思った。

そこからの最後、ビリーが殺人に行こうとするシーンのレイラのあなたは世界で1番優しくて、ハンサムな人よと伝えられるのに去ってしまうビリー。本当に殺人してしまうのかとハラハラしたが、そこは踏みとどまって、最高の女の子に出会ったと親友に電話するところに落ち着いて良かった。ここは愛が憎しみに勝つわかりやすいシーンかなと思った。

レイラが待ってるからハートのクッキー買って行くところとか、最高に可愛い。初めてここでビリーの笑顔が見られて、大分ビリーのことをこちらも好きになっている。欲を言えば最後ビリーが買って行ったものをレイラに渡して2人が幸せの具体的なシーンも見たかった〜と思った。

現代の人々が共通して持つ突然襲われる、何とも言えない孤独感と不安感でトイレで生きられないと泣いてしまうビリー。温かく包み込んでくれるレイラと出会えて良かったと思ったし、2人で幸せになってほしいと思った。

すごく泣くし、律儀にきちんとトイレ探すビリーが愛おしくなる物語だった。もちろんクリスティー・ナリッチの可愛さと、優しさとそれだけではない支えとなる芯の強さみたいなものも感じられて良かった。彼女の背景はまるで語られないのにそう思えるのはすごいなと思った。

想像の世界や、過去の回想のシーンを画面真ん中から四角が大きくなって行く演出見たことなくて面白い。

最悪の出会いを果たし、ビリーの繊細さとレイラの可愛さにやられる最高の恋愛映画だったし、誰かと温かいココアが飲みたくなる映画だった。
まや

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