ひでやん

バッファロー’66のひでやんのレビュー・感想・評価

バッファロー’66(1998年製作の映画)
4.1
出所した男がトイレを探し回って女と出会う。心ときめくロマンスでも、ありふれたボーイミーツガールでもない。誘拐と脅迫で始まったダメ男と天使のありえないラブストーリー。

金なし職なし女なしの粗暴なビリーに序盤でたっぷりと嫌悪感を覚えた。マイナスからスタートしたからこそプラスへの振り幅が大きかった。

口は悪いが子供っぽく、キレて怒鳴るも手は出さない。がさつに見えてナイーブで、前科もんだが罪はない。

いつからダメ男になったのか?彼の人生を遡るとタイトルにぶつかった。

66年、ビリーが生まれた年に優勝したフットボール・チームが、後に彼の人生を狂わせる…。

親に愛されなかったから、人への接し方や愛を知らない。本音で話し合える対等の友もなく、憧れだけが胸に宿る。

そんなビリーに対して、レイラの生い立ちはまるで見えない。なぜダメ男に寄り添い続けたのか?

逃げなかった理由はストックホルム症候群ではない。好きになった理由は夫婦を疑似体験した役割演技効果ではない。レイラもまた孤独だったのかもしれない。そして、彼の優しさを見抜いた…。

都合良すぎだ。こんな天使いないだろう。レイラはギャロ監督の願望なんだろうな。

レイラのタップダンスが良かった。
ベッドで硬直したビリーが良かった。

スクリーン中央からサイズアップする別ウィンドウで回想シーンを見せ、妄想シーンは逆にサイズダウンさせる手法はなかなか面白い。フィルムのざらつき、アングルや構図、色味が好きだった。

燃える復讐心は愛される喜びで浄化される。ココアとクッキーにほっこり。
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