ひでやんさんの映画レビュー・感想・評価

ひでやん

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スポットライト 世紀のスクープ(2015年製作の映画)

3.6

闇に注目の光を当てるジャーナリズム。

幸福の光の中に一点を照らす光を当てても薄くて見えないが、暗闇を照らす一点の光は鮮明だ。カトリック教会の闇に切り込むジャーナリズム魂は、石を穿つ水滴のようだった。
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オーディション(2000年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

信じられるのは痛みだけ。

ずっと観たかった映画をようやく鑑賞。キリキリキリという音を台詞にする事によって、耳にこびりついて恐怖となった。痛い…痛い。

オーディションの場面で、プロデューサーの吉川の
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Broken Rage(2024年製作の映画)

3.3

北野武を破壊するビートたけし。

アマプラ独占配信、約60分の実験的映画という事で鑑賞。なるほど、そうきたか。前半は北野武監督がシリアスに「Rage」を撮り、後半は芸人ビートたけしが同じストーリーでボ
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ロビンソン漂流記(1954年製作の映画)

3.4

金貨より火に価値がある島で。

嵐で船が難破し、漂着した無人島で28年2ヵ月と19日生き続けたロビンソン・クルーソー。そんな彼のサバイバル生活が88分でキュッと描かれているのでテンポは良いが絶望感があ
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ビリディアナ(1960年製作の映画)

4.5

無償の施しは、常に無防備な愛。

メキシコ時代のブニュエルが祖国スペインに戻り撮影した問題作。反宗教的な内容がバチカンの怒りを買い、各地で上映禁止に追い込まれたもののパルムドールを獲得。神に仕える者も
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皆殺しの天使(1962年製作の映画)

4.6

不条理劇ホラー。

20人のブルジョアの名前と顔を覚える前に、気持ち悪い違和感を覚えた。招待客が玄関に到着する場面が2度繰り返され、乾杯の音頭も2度繰り返され、熊に羊に鳥の足。 序盤から謎だらけで、知
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ナミビアの砂漠(2024年製作の映画)

3.8

遠くの安らぎと、近くの苛立ち。

ナミブ砂漠のナミブは「何もない」という意味らしい。何もない映画だなと思った。21歳の女性カナの日常を淡々と映し出す今作は、ドキュメンタリーと言うより、ライブ中継といっ
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52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)

3.9

誰にも聞こえない52ヘルツの叫び声。

傷を負ったキコに壊れた傘を差すムシ。キコとムシは骨が折れ曲がった傘のようだ。心が折れても互いに傘を差し、壊れた傘でも互いの雨を凌げる。安吾はキコへ、キコはムシへ
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

宇宙の中の地球の中の栗田科学の中の温もり。

劇中のBGMが心地良い。優しいその旋律は精神安定剤のようにスッと心に入り込んだ。友達以上恋人未満という言葉があるが、藤沢と山添は以上でも以下でもなく、フラ
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ミスミソウ(2017年製作の映画)

3.2

雪の中で春を待ち、早春に雪を割って咲く花は寂寥感漂う白花か、憎しみに満ちた紅花か。

R15指定となっているが、R100のいじめられっこ指定がいいと思う。100歳超えるとここまで復讐する力が無いだろう
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ブルー・バイユー(2021年製作の映画)

3.7

家族を引き離す残酷な移民法。

3歳で養子としてアメリカに渡り30年以上もそこで暮らしたのに、書類の不備で強制送還というのは残酷すぎる。彫り師のアントニオが客にタトゥーを入れる場面は、「俺はここにいる
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ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

3.5

壊れた傘の下で。

子を捨てた母とブローカーが里親探しの旅に出る今作は、テーマは重いが全体的に緩かった。殺人より人身売買を追っかけ、でっかいGPSを置く刑事が緩いから緊迫感がなかった。そして追われる側
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市子(2023年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

きっと明日はいい天気。

鼻歌を歌いながら市子が海の近くを歩くシーンがあるが、冒頭とラストでは全然違う印象だった。ハミングするのは童謡「にじ」で、雨があがって虹がかかって明日はいい天気というポジティブ
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リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)

3.6

貴船川のほとりに佇んで。

2分間のタイムループから抜け出せなくなる群像コメディ。京の奥座敷として愛される貴船が舞台で、オール貴船ロケ。長い階段に朱灯篭が並ぶ貴船神社と、情緒あふれる老舗料理旅館「ふじ
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ファミリー☆ウォーズ(2018年製作の映画)

3.1

一家団欒からの一家狂乱。

食卓を囲む家族の日常から始まるが、序盤から嫌な予感がした。それは銃を持つ隣人と認知症の祖父という2大不安要素のせいだ。案の定、爺さんがやらかしてタイトル通りの家族戦争へと雪
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ぱん。(2017年製作の映画)

3.0

15分ドラマ パンは地球を救う。

朝はパン、パンパパン♪ナンもパン、パンパパン♪バイトのインド人がナンもパンて言うから、そういう事にしておこう。

阪元裕吾と共同監督した主演の辻凪子が、パン屋をクビ
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キャンディマン(1992年製作の映画)

3.2

語り継がれて存在する殺人鬼。

ヒロインのヘレンがとにかく可哀想。目を負傷し、誘拐犯にされ、友人を殺され、旦那に裏切られ、踏んだり蹴ったり。散々な目に遭ったあと泣きっ面に蜂…。蜂、蜂、蜂。多過ぎるわ。
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.1

世にも奇妙な里帰り。

3時間もある上映時間に一瞬怯んだが、その体感速度はまるで夢の中だった。治安の悪いアパートから介抱される邸宅、旅劇団と出会う森の中、実家から審判の泉まで、奇想天外に切り替わる場面
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ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ(2024年製作の映画)

4.0

満身創痍の舞台裏。

暑い中、かなりハードな撮影だったんだな。体中が痛くて一睡もできなかったという池松壮亮、足を怪我した大谷主水、体調不良でダウンした高石あかりと伊澤彩織。皆、限界を越えてる。県庁での
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死霊のはらわた(1981年製作の映画)

3.7

縦横無尽のカメラワーク。

邦題エグい。死霊って…そんで、はらわたって…おぞましいタイトルだ。サム・ライミ監督が低予算で撮った血みどろブッシャーのスプラッター映画。まず冒頭の死霊視点が怖い。森の中で蠢
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ポルターガイスト(1982年製作の映画)

3.5

死者たちの怒りのハリケーン。

家中をうろつき回る犬の視点で始まり、5歳の少女へと切り替わる冒頭が最高。砂嵐のテレビを見つめる少女がジャケ写になっているが、このシーンが一番印象的だった。これぞスピルバ
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わたしの幸せな結婚(2023年製作の映画)

3.6

連綿と続く血の中で。

古来、こノ国では恐怖心が生み出す鬼や妖ヲ異形と呼び…。この冒頭のテロップで違う映画を観てしまったのかと思った。前知識もなく鑑賞したので、タイトルからは想像もできない重々しいオー
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FALL/フォール(2022年製作の映画)

3.5

手に汗びっしょり。

地上600メートルのテレビ塔になぜ登った?「そこに塔があるから」ではなく、ここにSNSがあるからで、投稿した動画でバズりたいだけだよね、ハンター。立入禁止の現在は使われていない老
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RRR(2022年製作の映画)

4.8

たぎる、みなぎる、ほとばしる。

イギリス植民地時代のインドを舞台に、互いに素性を知らないまま出会った2人の男の熱い友情と戦いを描いた物語。独立運動の英雄がモデルとなっているが、今作で描くのは歴史では
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ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ(2024年製作の映画)

4.3

格別にゆるやかなバカンスと、格段にレベルアップしたアクション。

宮崎県を舞台に、ゆるフワ&キレッキレのアクションを繰り広げる今作は、3作目にしてシリーズ最高傑作だった。史上最強の殺し屋と序盤で対峙し
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スロータージャップ(2017年製作の映画)

3.6

刮目せずに、細目で耐えろ。

不謹慎、不道徳、不愉快の3F胸糞濃厚ブラック・コメディ。フェスティバル&カーニバルのノリで全編突き進むバイオレンス&カニバリズム。オープニングからエンド・クレジットまで狂
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ハングマンズ・ノット(2017年製作の映画)

2.7

全編にわたって容赦なきバイオレンス。

低予算の自主制作映画で、よくここまでの暴力描写を撮ったものだ。ヤンキーvsサイコパスという発想は良いが、過激な映像を撮りたいだけのように思えて、何か大事なものが
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べー。(2016年製作の映画)

3.4

日常が一瞬で血に染まる衝撃。

阪元裕吾監督が大学在籍中に撮影した短編映画で、衝動的な暴力と貫き通す愛を描く。過去の映像に突入する時、「回想」というテロップが画面中央にでっかく出る作品を初めて観た笑。
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スイス・アーミー・マン(2016年製作の映画)

3.6

アホらしいが嫌いじゃない。

屁をこく死体で無人島から脱出したとさ。めでたしめでたしって、エンド・クレジットが流れるようなオープニング。あ…これから始まるのか、ここからどうやって話を広げるんだ?て思っ
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WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

3.8

前半と後半でガラリと変わる二部構成の転落と再生。

今この瞬間を謳歌する若者たちのエネルギッシュな波が猛り狂い、回転してうねるカメラと音楽が彼らの感情と連動する。そんなオープニングに圧倒されながら、こ
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.0

無関心ではいられない人たちの喪失と救済。

自らの死期を悟った肥満症の男が娘との絆を取り戻そうとする今作は、とにかく観ていて胸が苦しかった。笑うだけで咳き込み、胸に手を当てるチャーリーに身動きが取れな
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プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

3.9

カラフルなバタークリームでデコレーションされた毒入りカップケーキ。

泥酔したふりして男たちに制裁を加える序盤で居心地の悪さを感じた。ターゲットとなる男たちは、力任せで襲いかかるチンピラではなく、大胆
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言の葉の庭(2013年製作の映画)

3.8

”愛”よりも昔、”孤悲”のものがたり。

キャッチコピーがもうシャレている。万葉集をモチーフに淡い恋を描いた今作は、新海ワールド全開だ。とにかく雨の描写が美しい。池の水面に映る木々の緑と波紋、路面の反
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星を追う子ども(2011年製作の映画)

3.1

既視感たっぷりのジュブナイル。

冒頭、小高い丘の上で鉱石ラジオに耳を傾ける少女。その主人公アスナがトトロのサツキにしか見えず、ミミがナウシカのテトに見えたので、そこからもう何もかもがジプリに見えて仕
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雲のむこう、約束の場所(2004年製作の映画)

3.5

世界を救う眠り姫。

津軽海峡を挟んで日本が南北に分断された戦後というもうひとつの世界を舞台にしたのは良かったが、登場人物に感情移入できないままだった。どこにでもいそうな等身大の少年が主役なら、その少
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すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.8

重くてフワフワした震災+ファンタジー。

すずめが海の見える坂道で草太と出会うシーンがグッときた。光の表現や色彩が素晴らしく、今作もまた風景描写が緻密で美しい。地震の警報音が鳴るシーンは、今年の元日を
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