ひでやんさんの映画レビュー・感想・評価

ひでやん

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さらば、愛の言葉よ(2014年製作の映画)

4.1

イマージュの海に溺れて。

初期のゴダールは「男と女と車(+銃)」で映画を撮ったが、83歳にして発表した今作は「男と女と犬」の物語を3D映画で世に放つ。登場するのはゴダールの愛犬ロクシー。

「想像力
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ゴダールの探偵(1985年製作の映画)

3.6

反転する真実と、反復する事実。

赤と白のクレジットが洒落ているなと思っていたら、やたらと引っ張るもんだから、サイレント映画の字幕みたいになるクレジット。冒頭でカメラの横に立つ女性の足が映し出され、そ
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カルメンという名の女(1983年製作の映画)

4.2

『ゴダールのカルメン』というタイトルの方がしっくりくる。

政治に傾倒していた時代を通過し、80年代に入ったゴダールは著作権が切れたオペラ『カルメン』を換骨奪胎。男と女の駆け引きを描いた今作は、原点回
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青春残酷物語(1960年製作の映画)

3.8

痛々しい無軌道な愛。

ジャン=リュック・ゴダールに「真のヌーヴェルヴァーグだ。 私やトリュフォーよりも前にオオシマは、既存の映画とは全く違う映画を撮っていた」と言わしめた衝撃作で、松竹ヌーヴェル・ヴ
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ザ・ファブル 殺さない殺し屋(2021年製作の映画)

4.0

少女に負わせたダメージと、少女に持たせたイメージ。

アクションは前作よりパワーアップし、ストーリーは前作より感動的だった。続編となる今作の敵は、表向きは善良なNPO団体の代表だが、裏では資産家の子息
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ザ・ファブル(2019年製作の映画)

3.6

殺し屋休業につき、殺さずの救出ミッション。

原作未読なのでキャラに対するイメージがなく、フラットな気持ちで楽しめた。ボスの命令で一年間、一般人として普通に暮らすことになった伝説の殺し屋を描いた今作、
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17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)

3.7

孤独と決意、表情で語る17歳。

邦題からはキラキラとした青春の輝きをイメージしたが、木で鼻を括ったような少女の瞳は憂いを帯びていた。主役のオータムは時折口角をわずかに上げる程度で全然笑わない。その無
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ある男(2022年製作の映画)

3.9

分からなかった真実より、共に過ごした事実。

男の後ろ姿が正面で左右反転せずに、そのまま鏡に映り込むマグリットの絵が映され、タイトルバック。意味ありげな冒頭から興味が湧く。そして車窓に映る自分の「顔」
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フィールド・オブ・ドリームス(1989年製作の映画)

3.6

トウモロコシ畑でつながって。

あの日あの場所に、置き忘れた夢がひとつふたつ。家族や仕事や友や恋…悩みの絶えない人生が積もり、夢に蓋をする。それは縦積みにされた雑誌のようで、一番下の夢が引っ張り出せず
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ワイズマンとのピクニック(1968年製作の映画)

3.8

穏やかな陽だまりの中で。

緑の木立でレコードが回り、スーツがフルーツを食べて、椅子がサッカー。チェス盤がゲームをし、塵取りがせっせせっせと穴を掘る。草の上で繰り広げる家具たちのピクニック、無人のピク
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J.S.バッハ G線上の幻想(1965年製作の映画)

3.6

最低音の弦が奏でる音とイメージ映像の共振。

脚本を使わずに即興的に撮影したというシュヴァンクマイエルのモノクロの短編。全体を暗闇が占め、壁や窓、扉や鉄枠が音の響きと重なる。正面から捉えた平面の映像に
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フード(1993年製作の映画)

4.0

食事をテーマに3部構成で描いた短編。

食べてりゃとにかく生きられる。生きてりゃなんとかなる。辛い事があるとそんな事を考える自分だが、そのポジティブ思考を破壊するシュヴァンクマイエル。幼少期に食べ物へ
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ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

3.8

青い巨人が支配する惑星で。

ぶっ飛んだ発想力と想像力に感心。奇怪で不気味な生物や植物、独創的な建造物、強烈なドラーグ人のビジュアルなど、この世界観を70年代に描いた事に驚き。宮崎駿が今作を観て「日本
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Mr.ノーバディ(2021年製作の映画)

3.9

B級感が漂う極上のハードボイルド・アクション。

月曜日、火曜日…と、スピーディに描く中年男の一週間。1日を2,3秒くらいで描く日常ルーティンのテンポが気持ちいい。ジャームッシュが観たらきっと苦笑いだ
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ファーザー(2020年製作の映画)

4.2

追憶と忘却の狭間で揺れる木の葉。

誇り高く生い茂る知性の葉が、はらりはらりと散りゆく黄昏。冬枯れの心に浮かぶは若葉の日々…。

記憶があるから認識出来て、いつどこで…の5W1Hが分かる。その「当たり
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ミナリ(2020年製作の映画)

3.6

じわじわとやってくる余韻。

農業で成功することを夢見てアメリカの田舎町にやって来た韓国系移民家族の物語で、序盤から『北の国から』に似た雰囲気。夢見る父と現実を見る母が衝突し、父の身勝手さだけが目立つ
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オテサーネク 妄想の子供(2000年製作の映画)

4.0

渇望の具現化と、おとぎ話の映像化。

不妊に悩む夫婦が、赤ん坊の形に削った切り株を我が子としてかわいがるダークファンタジー。序盤から夫の幻覚が強烈。水槽に網を突っ込んで赤子をすくい、新聞紙に包んで客へ
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ファウスト(1994年製作の映画)

3.8

唯一無二の不気味な世界。

ゲーテの戯曲を独自でアレンジし過ぎて、あまりにもかけ離れたラストに唖然。15〜16世紀頃の錬金術師を、現代の中年サラリーマンに置き換えたシュヴァンクマイエル版『ファウスト』
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アリス(1988年製作の映画)

4.3

ファンタジーが好きな子供の笑顔を泣き顔に変えるダークな世界。

兎追〜いし〜引き出し〜♪で不気味な国へ。バケツから地下へと続くエレベーターの中で、アリスが目にする気味悪い瓶、瓶、瓶。インク飲んでクッキ
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騙し絵の牙(2021年製作の映画)

3.5

策ある編集長は牙隠す。

大手出版社を舞台に、廃刊寸前の雑誌の編集長が企てた一発逆転の秘策を描く。騙し合いバトルに期待し過ぎてしまった。キャッチコピーに嘘はなかったが、ちょっと大袈裟。新人編集者を引き
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すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.2

娑婆は我慢の連続ですよ。

我慢できない事が多すぎる。正義を通せば偽善者で、見ないふりすりゃ薄情者。極道も堅気も生きづらい世の中なので、三上の葛藤に共感するものがあった。鉄格子の外に思いを馳せても夢見
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マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

3.9

そこはかとなく揺らめきハート。

先ず最初に気になったのがドランの顔にあるあざ。そりゃあ気になります。人を見るより先にあざを見るから気になる。マキシムの友人たちは、人を見ているからあざが気にならないの
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ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

3.7

ハリウッド的な演出の中に散りばめたドラン節。

幼少期にレオナルド・ディカプリオにファンレターを送ったというドラン監督の実体験から着想を得ている今作は、ハリウッドの豪華キャストとタッグを組んだ初の英語
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神のゆらぎ(2014年製作の映画)

3.5

道徳と戒律の狭間で。

宗教上の戒律に苦しむ女性看護師と白血病の婚約者、ドラッグの運び屋、不倫関係にある老齢カップル、アル中の妻とギャンブル狂いの夫という男女7人の運命を、現在と過去を往来しながら描く
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ドラゴン危機一発(1971年製作の映画)

3.6

チープな空気を切り裂くシャープな切れ味。

アメリカから香港に凱旋したブルース・リーがゴールデン・ハーベスト社と契約して主演した1作目で、ここからドラゴン伝説が始まったわけだが、今作はストーリーが酷く
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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(2020年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

下弦の月に惑わされ、上弦の月に逃げられて。

20年近くの間、歴代興行収入が不動の1位だった『千と千尋の神隠し』を抜いて社会現象化した今作。そんなバケモノを3回鑑賞し、何がすごいのかを考えた。

1つ
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ある用務員(2020年製作の映画)

3.5

敵討ちの連鎖を断ち切る普通の女の子。

今作で登場する女子高生の殺し屋コンビが、『ベイビーわるきゅーれ』で主役になったという事で鑑賞。こっちを先に観ればよかった。今作の主役はタイトル通り用務員なので、
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ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー(2023年製作の映画)

4.0

殺せども殺せども我が暮らし楽にならざり。

てっきりパート2は、「まひろ車の免許を取りに行くの巻」だと思っていたら既に取ってた。そして「15時までにお金を振り込まなきゃの巻」で銀行強盗ボッコボコ。ジャ
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べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)

4.2

本業の殺しより苦戦するバイト。

サクッと人を殺して、ワッフルの盛り付けにあたふた。このギャップがたまんない。人殺し以外何もしてこなかった女子高校生の殺し屋コンビが、卒業目前にして社会に適応しようと奮
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(2023年製作の映画)

3.7

首を奪う百姓、首が欲しい光秀、首などいらぬ秀吉。

構想30年、6年ぶりとなる北野武監督の新作は、お蔵入り報道を気にしながら「首」を長くして待っていたが、無事公開となり安堵。漢字一文字の「首」が斬殺音
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たかが世界の終わり(2016年製作の映画)

3.3

主人公が帰郷するまでの冒頭は良かったが、実家に着いてからの会話劇がいまいちだった。妹の憧れだったり、兄の苛立ちだったり、ぎくしゃくした家族の不器用さや距離感を同じ空間で描くのは流石だが、アップショット>>続きを読む

胸騒ぎの恋人(2010年製作の映画)

3.8

恋の胸騒ぎにマシュマロが降り注ぎ、恋の終わりに雨が降る。

バンバン。撃たれっぱなしの心に銃あれど、向けて放つと空砲なり。ゴダールやトリュフォーが描いた男ふたり女ひとりの構図も、ドランが描けば美青年を
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マイ・マザー(2009年製作の映画)

3.9

破壊の衝動と、元に戻す行動。

グザヴィエ・ドランが17歳の時に書き上げた半自伝的な物語で、19歳の時に監督・主演を務めたデビュー作っていうから驚き。雑誌をパラパラと捲るようなモンタージュ、モノクロの
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罪の声(2020年製作の映画)

3.7

無垢なる声を悪に変えた身勝手な正義。

昭和最大の未解決事件を題材にしたミステリー。日本中を震撼させたグリコ・森永事件の真相に迫るのだが、とにかくこの事件は謎だらけ。複数の食品メーカーを脅迫し、警察や
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浅田家!(2020年製作の映画)

3.7

普通とちゃうけど、なんか良いな…そんな家族にほっこり、時々ほろり。

家族大怪我3連チャンの序盤からコメディ色が濃ゆい。写真家・浅田政志の実話をベースに映画オリジナル要素を加えた今作は、とにかく役者が
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バニー・レークは行方不明(1965年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

失踪映画の金字塔。

紙を破るオープニングが洒落てる。モノクロによる陰影や、巧みなカメラワークが不安を煽る。アンを演じたキャロル・リンレーがお人形さんの様に美しく序盤から惹き込まれた。

シングルマザ
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