とり

ボン・ヴォヤージュのとりのレビュー・感想・評価

ボン・ヴォヤージュ(2003年製作の映画)
4.5
観たいと思ってた一番の理由は、ジェラール・ドパルデューが出てるから。ちょい不純な動機かもしれませんな。
あとはイザベル・アジャーニが年齢不詳ぎみに主役をこなしてるってくらいの情報しか持ち合わせていませんでした。

劇場内に入ると前の回らしきお客さんとすれ違って、その時「時代背景がよくわかんなかったな」なんていうご婦人のお言葉が聞こえてきた。⋯やばい、そんなに小難しい映画なのか?

凄く凄く良かったです。いい映画だと思います。
フランス映画って、日本人の感性にとても響くというか合うなぁと思いますね。
たぶん似てるんでしょうね、風情とかワビサビとか、そういうの。
ヤンキー映画の大味なジョークは、何がそんなに面白い?ってしらけてしまうこともよくある。いや、好きなんですけどね、大味映画も。
この映画は場内同じシーンで爽やかな笑いが巻き起こっていました。

お目当てのドパルデューは・・・歳を取ってしまったなぁという思いがひしひしと。
すっげーつまらない役どころでちょっとガッカリぎみ。
中盤あたりまではそこそこ出演してたけど、その後パッタリ消えてしまった。
最終的には最初感じたほどつまらない役ってわけでもなく、彼なりに上手く感情をあらわしていたと思います。
映画での最終的な彼の扱いを見るとまさにフランス映画、ひいてはフランスそのものという存在なんだろうなぁと。

イザベル・アジャーニはもう唖然ですな。
お姉さんおいくつ?って気になって仕方ないくらい若々しい。化け物?
さすがにドアップの時、肌のハリがちょっとおや?と思う時もあったけど、そんなのも数える程だったし。
10代のギャルでもオールナイトで遊び明かした日にゃ、こんくらい疲れた顔にもなるやろってな具合。
あと、漆黒のウエーブヘアがとても素敵でした。

大まかなストーリーは、
第二次世界大戦のフランスで巻き起こる様々な群像劇。
風とともに去りぬのフランス版とでも言いましょうか。
戦火を生き抜く一人のたくましい美女を中心に、色んな人々のそれぞれのドラマがコンパクトに上手くおさめられています。
けっこうたくさんの人が出演してる中、シーンの切り替えや配役がとても良かったです。
多人数のわりに見分けやすくわかりやすいストーリーも好感が持てるし、それぞれの個性もあるので、もう一度最初から観ると更に楽しめるのでは。
主役が女優という設定をいかしたオープニング・エンディングも映画ファンニッコリの仕掛け。
「カイロの紫のバラ」を彷彿とさせます。

心配していた時代背景の小難しさは、これっっっっっぽっちもありませんでした。
義務教育でそれなりに第二次大戦の勉強をしてたら、普通に理解できるやろって範囲。
とりあえずナチスドイツがブイブイ言わせてた頃の周辺諸国の事情が大まかにわかってりゃOK。
ただ、私自身ネイティブじゃなくて残念だったのはドイツ人がフランス語を話す時の訛りってどうなのかな?ってところ。
ドイツからスパイとしてフランスに潜入している人の口調とかこだわって聞きたかった。

題材自体はけっこう暗くて重いテーマを含んでるんですが、人物および画面が明るくて、とてもライト感覚なので気持ちよい時を過ごせて、おすすめです。

シャンテシネにて(現在はTOHOシネマズシャンテ)
とり

とり