宮崎監督は映画制作が終わると、疲れた体を休めるために信州にある別荘でひと夏を過ごす。そこには成長した姪が残した少女漫画雑誌が。不揃いなそれを毎夜読んでいるうちに映画化を考えるようになった、という。
企画としては『耳をすませば』が先行してしまったが、ご本人は本作の原作に強い関心を持っていたようだ。毎夏、少女漫画を読み耽りたくなる気分のことを〝コクリコ気分〟と名づけていたという。
主人公は下宿屋の女子高生で、炊飯を担当している。私も今、毎日主夫業をやっている人間なので、その大変さはよくわかる。唸らされると同時に「なんで他の寮生は手伝わないの?」とも思ってしまった。
ただメインストーリーは、同じ高校に通う男子生徒との関係。亡くなった父親が知っている彼の出生の秘密や、同時に守ろうとしている部室棟を救う活動がメインになっている。
ひとりの女子高生が好きな同級生のために奮闘する姿を描いているあたりはさすがに少女漫画だか、60年代の横浜が舞台という設定がドラマに深みを与えていて、単なるラブストーリーになっていないところはジブリらしい。
ただ、後半がいまひとつ盛り上がりにかけるところも、やはり少女漫画という気がする。・・・いや、べつに嫌いではないのだけど、あっさり問題が解決してしまうところが、どうにも物足りないのだ。
2011/夏 TOHOシネマズ 西宮OS
2024/11/24 Max (US)