漱石枕流さんの映画レビュー・感想・評価

漱石枕流

漱石枕流

わるい仲間(1963年製作の映画)

3.8

ゴダールの2作品を鑑賞して「課題もだいたい書けたし、ヌーヴェル・ヴァーグはこれくらいでもういいかな」と思ったのだが、ランタイムも短いのでこの中編を鑑賞。

本作は序盤からどきどきさせられる内容だった。
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関心領域(2023年製作の映画)

4.3

ヌーヴェル・ヴァーグの作品を鑑賞したのは芸術論なのだけど、これとは別に並行してとっている授業にドイツ学の講義がある。本作は課題ではないのだが、先生がこの作品に触れたため、無性に観たくなった。

アウシ
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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

2.8

ヌーヴェル・ヴァーグの課題は1作品で十分なのだけど、この機会だからとつづけて鑑賞。本作を選んだのは、先生のお勧めとサブスクにタイトルがあったからで、これも2回鑑賞(詳しくは『勝手にしやがれ』のレビュー>>続きを読む

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

2.7

前に投稿した『カリガリ博士』につづき、大学の授業の感想レポート対象作品として、鑑賞。ちなみにお題は「ヌーヴェル・ヴァーグ作品の特徴を述べよ」というもの。課題を書くために2回鑑賞した。

長年映画を観て
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ロミオとジュリエット(2019年製作の映画)

3.3

元はバレエ公演だという。が、私自身バレエそのものには縁がない。しかしそれでも「この機会にどんなものか観てみるか!」と興味を持って挑んだ。つまらなくはない。映像はきれいだし、一味違う体験ができたというの>>続きを読む

ボイリング・ポイント/沸騰(2021年製作の映画)

3.8

ワンカットワンシチュエーションのドキュメンタリー風——というのは、もうめずらしくもないし、そもそも長回しにする必要もないとは個人的に思うのだけど、観客を退屈させない力量は素晴らしい!

なにより、私の
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カリガリ博士(1920年製作の映画)

3.2

私は今年に入ってから新しいことを始めた。そのひとつが「聴講制度を利用して大学に通ってみる」だった。成績評価はしてもらえるが、単位はもらえない。でも学歴欲しさに通うわけではないので、別に構わない。

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名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)(2024年製作の映画)

3.7

昨年は最先端のテクノロジー技術に取材して事件が展開させていたが、本作はまたがらっと趣向を変えて、古い時代を遡る話になっている。似ている題材を続けないのは好ましい。あの手この手で観客を楽しませてくれる。>>続きを読む

ブラック・サイト 危険区域(2022年製作の映画)

2.9

ミッシェル・モナハン主演! に期待したが、それ以外はとりたてて特筆すべきものがない映画だと思う。

冒頭のシーンを除いて、ほぼ秘密基地内で展開するスリラーなのだけど、とにかく緊迫感が薄いのだ。これは演
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ARGYLLE/アーガイル(2024年製作の映画)

3.8

スパイコメディーにしては上映時間がやや長い。できれば2時間以内で収めてほしいなと思っていたのだけど、だがしかし! これが意外にも飽きさせないのだ。

人気作家が書くスパイシリーズの内容が、じつは現実に
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フラッグ・デイ 父を想う日(2021年製作の映画)

3.6

こういうダメ親父って、たしかにいるなと思う——完全に自分に酔っているタイプ。「俺は優れた人間だ!」と思い込んでいるが、じつはとんでもなくつまらない人間で、そのことにまったく気づいていない〝イタい〟野郎>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.8

この名前は日本人にとって、とても複雑な感情を抱かせる。ただ、映画はあくまでも〝原爆の父〟と呼ばれた男の半生を描くことに徹していて、広島や長崎についての話ではない。ひょっとしたら原爆の映画ですらないのか>>続きを読む

グッバイ、ドン・グリーズ!(2022年製作の映画)

3.4

おそらく『スタンド・バイ・ミー』が下敷きになっているのだろうな・・・ と感じられた。山火事犯扱いされた3人の少年たちが、無実を晴らす証拠となるものを探すため、小さな旅に出る。

もちろんその設定自体は
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ウインドトーカーズ(2002年製作の映画)

3.5

太平洋戦争時、日本軍にことごとく暗号を解読されてきたアメリカ軍は原住民であるナバホ族の言葉を用いて暗号を作った。これを母語とする通信兵に託し、彼らに白人兵を援護につけ、東京空襲の足がかりを作るためサイ>>続きを読む

キッチン・ストーリー(2003年製作の映画)

3.9

「そもそも、いったい何のための調査なのか?」という疑問が終始先頭に立つのだけど、もうとにかくおかしい! よって「まあ、いいかな」という気になってくる(笑)

どうあっても人間はロボットになれない——こ
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ビースト(2022年製作の映画)

3.7

Apple TV+の傑作航空パニックドラマ『ハイジャック』を観て、イドリス・エルバに好感を持った。だから、その点に期待した。実際、彼のアクションは見どころのひとつなのだけど、主人公は〝あと一匹いる〟と>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

3.9

今年のアカデミー賞にはノミネートもされなかったけど、ホアキン・フェニックスはハマり役だと思う。すくなくともこの存在感が出せる俳優はそうはいない。予告編でそう感じたし、本編鑑賞後もその感想は変わらない。>>続きを読む

ワイルド・リベンジ(2022年製作の映画)

2.9

「名優なのに、どうしてこんな映画に出るのかな?」デ・ニーロにはそう思わされることがたまにあるのだけど、本作もそんな1本だった。

B級だけど、映像自体は一定程度作り込まれているので、それほどチープさは
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スターリングラード(2000年製作の映画)

3.8

最近になってようやく『同志少女よ、敵を撃て』を読んだ。今になった理由は図書館で予約待ちをしていたから。「忙しいこの時期に!」と思ったが、かといって列に並び直す気も起きない。頑張って返却期限までに読み終>>続きを読む

ワイルド・ロード(2022年製作の映画)

3.5

映像は作り込まれていると思う。冒頭の1カット目からそれが感じられた。ただ、期待したほどは引き込まれなかった。夜行バスのなかで展開するワン・シチュエーションというのはおもしろいのだけど、緊迫感がもうひと>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.1

とにかく長い! 劇場鑑賞をあきらめた理由がそれ。忙しい上にトイレが近いので、うまく調整しない限り不可。自宅でもしんどい。昼前から鑑賞始めたのだけど、1時間休憩を取ったので、終わったのは四時すぎていた・>>続きを読む

犬王(2021年製作の映画)

3.1

むかし、あるインタビューで故・高畑勲監督が漫画やアニメの起源について語っていた。

それは平安時代の〝絵巻物〟にあるという。西洋の絵画表現にはない線で描いたタッチの絵で物語を綴っているあたり、たしかに
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ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)

3.7

遺書というと、今の時代は〝遺された財産についての分配指示書〟という意味合いの方が強いと思う。実際、私も昨年末に父を亡くしたのだけど、遺書にはそれだけしか書かれていなかった。なので、本作には温かみを感じ>>続きを読む

ダーティハリー(1971年製作の映画)

3.6

有名なシリーズなので、前から機会があれば・・・と考えていた作品だった。とにかくクリント・イーストウッドが若い! というのが、第一印象。とは言っても公開時の年齢が41歳なのだなぁ。でも、やっぱり若々しい>>続きを読む

オスロ、8月31日(2011年製作の映画)

3.5

若い頃にヘルマン・ヘッセの『車輪の下』を読んだとき、なぜこれが名作なのかまるで理解できなかった。主人公が自殺に至る過程をていねいに描写されているとは思うが、それだけでまるで救いがないように思えたからだ>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

3.8

以前、テレビでこんな悩み相談を目にした。自分は福耳の持ち主で幼い頃に「大成するかダメ人間になるかのどちらかだ」と祖母から言われた。それでいろんな仕事に手を出したけど、どれも長つづきしない。

「このま
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カリフォルニア(1993年製作の映画)

3.8

真っ先に思った。「悪役に徹しているブラピは、これが初めてかもしれない」と。調べてみると本作だけではないので、まだまだ出演作を観ていないのだと思った。いずれにしても、ちゃんと役を演じきっているのはさすが>>続きを読む

ラブ・オブ・ザ・ゲーム(1999年製作の映画)

3.7

サム・ライミが野球映画を撮っていたことをこの鑑賞で初めて知った。ただ、どちらかというと〝ゲーム〟よりも〝ラブ〟に寄っているかと思う。遠征中に恋仲になった相手との関係を振り返りながら、試合が進む。

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屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)

3.8

〝想像上の自分だけの友達〟は、子供たちの共通体験なのだろう。が、私の場合はすこし違っているかもしれない。少なくとも、この映画のような友達はいなかった。どちらかというと物語を創造している感じで楽しんでい>>続きを読む

ファミリー・プラン(2023年製作の映画)

3.5

かなり軽い映画だと思う。完全なポップコーンムービーだからそれでいいのだろうと思うけど、やっぱりそれなりにメリハリがないと、映画としては盛り上がらないのでは? とはいえ、それでもつまらなくはなかったが。>>続きを読む

THE ICEMAN 氷の処刑人(2012年製作の映画)

4.1

私は映画をよく観ているけど、現実と混同しないように気をつけている。たとえば「殺し屋だから、罪悪感なく人を殺せて当たり前」とは思わない。ところが本作は「そんな殺し屋が実際にいた!」という驚きの実話である>>続きを読む

ザ・バンク 堕ちた巨像(2009年製作の映画)

3.7

とてもリアルに感じられた。鑑賞中はずっと実話だと思っていた。ただ、ルクセンブルクにIBBCのモデルになった銀行は実在したようで、そういう意味ではまったく現実味のない世界を描いているわけではないのだろう>>続きを読む

Never Goin' Back ネバー・ゴーイン・バック(2018年製作の映画)

3.8

ティーンエイジャー向けのインディペンデント映画としては、とてもおもしろかった。少女たちの友情を、一定のリアリティーを保った上でのコメディーとして描いていて、最後まで飽きさせない。

もちろん「ふたりが
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クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

3.7

このタイトルはとても印象に残る。筋肉隆々の男が泣いている姿が真っ先に頭に浮かぶ。いったい、どんな映画だ? が、フタを開けたら、元ロデオの老人が13歳の少年を父親の元へ帰す話で、マッチョは鶏の名前だった>>続きを読む

彼女のいない部屋(2021年製作の映画)

3.5

Rotten Tomatoesで批評家の採点が高く、一般の評価が低めの場合、前衛的だったり芸術性重視の作品になっていることが多い。しかし悪く言えば〝わけのわからん映画〟だ。本作もちょっと嫌な予感がした>>続きを読む

でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード(2021年製作の映画)

3.7

大きな仔犬——うーん、まさしく形容矛盾だ。でもだからこそ、興味が注がれる。子供向きでストーリーもオードックス。最初は気軽に観始めたが、目が離せなくなったのは、巨大化した子犬の動き。たいへんリアルなのだ>>続きを読む