漱石枕流さんの映画レビュー・感想・評価

漱石枕流

漱石枕流

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)

4.6

宮崎監督の意外な一面なかに〝独ソ戦のエキスパート〟がある。鈴木Pによると「そんじょそこらの軍事評論家や戦争研究家など太刀打ちできない」ほど詳しいのだそう。ただ、子供向きの映画を作るときは、おくびも顔を>>続きを読む

ハート・オブ・ストーン(2023年製作の映画)

3.2

これもたくさん作られているスパイものではあるが、まだ現実にはない先進的なデータ解析テクノロジーを諜報活動に取り入れられている。この点でSFとして他の作品との差別化が図られているのだ。

これだけでも、
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ミッション:インポッシブル3(2006年製作の映画)

4.5

現時点で、このシリーズの中でいちばん好きな作品である。もちろん豪華さとか派手さといった観点からすると、これ以降の続編の方が優れているけど、私には本作の方が、全体のバランスが上手く取れていると感じる。>>続きを読む

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

3.7

元になったものが非常に有名なタイトルではあるが、今までずっと縁がなかった。よって比較はできないが、前知識がない方が楽しめると考えた。実際、見応えはあった。が、しかし、不快感の方が強かった・・・

戦争
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グッド・ナース(2022年製作の映画)

4.3

私は湖東事件に真剣に腹を立てている。これは実質的に滋賀県警による犯罪と言えるが、しかしそもそもなぜこういった冤罪事件が起こるのかというと「看護師による病床殺人という実例があるからだ」とも言えるのだ。>>続きを読む

M3GAN/ミーガン(2023年製作の映画)

3.5

AIロボットを題材にした映画は昔から普通にあって、何もめずらしくない。しかしそうした作品は、たいがい俳優が演じていてロボット感に欠けている。よって、リアリティーが薄いのだ。

その点、本作に出てくるそ
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ナポレオン:ディレクターズ・カット(2023年製作の映画)

3.9

「くそっ、スコセッシの野郎、3時間半近くもあるものをぬけぬけと公開しやがって。こっちは短くしないと客が入らないからって泣く泣く48分も落としたのに・・・ よーし、こうなったらリベンジしてやるぜ!」>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

3.5

おもちゃの世界を映画にするのはめずらしくない。『トイストーリー』なんかは、その典型。しかし本作の企画に関しては目から鱗だった。「おお! この手があったのか」と。

たしかに〝あたかもお人形さんのように
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となりのトトロ(1988年製作の映画)

4.9

子供の頃(70年代後半から80年代にかけて)、夏休みになると私たち一家は母方の実家で過ごした。そこはまるで絵に描いたような見事な田舎。いったい隣の家がどこだかわからないくらいなのだ。

その藁葺きのぽ
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グレイマン(2022年製作の映画)

3.9

スパイアクションであるこの作品もボーン・シリーズに影響を受けた一本だと思う。が、ただの亜流には終わっていないところがミソである。

映像が作り込まれていて、かなり見応えがある。カーチェイスのシーンなど
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移動都市/モータル・エンジン(2018年製作の映画)

2.7

現代文明が崩壊した未来を描いたSFだが、斬新に感じられるのは、都市が丸ごと移動能力を持っているという大胆な設定だろう。なので序盤はワクワクした。が、それは早い段階で裏切られてしまった。

なぜなら、作
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フェイフェイと月の冒険(2020年製作の映画)

2.8

昔、私はお菓子作りが趣味だった時期がある。洋菓子と和菓子、両方を作っていたなか、月餅にもそそられた。しかしこれはハードルが高かった。材料が揃えにくいというのもあったが、焼き型がないのが諦めたいちばんの>>続きを読む

ワンダーランド: あなたに逢いたくて(2024年製作の映画)

3.6

とつぜんだが、私はこの映画に〝ミイラ〟を思い出す。古代エジプトのものが有名だが、アンデスの方が歴史は古い。当時の人々は家族が死んだ後、それをミイラにして家内に置き、生きている人同様に接していたのだとい>>続きを読む

底知れぬ愛の闇(2022年製作の映画)

3.7

鑑賞を始めてすぐ、なんとも言えないものを感じた。この作品の主人公は、目が届く範囲で妻が浮気をしていても、感情を露わにしないのだ。現実の世界が舞台なのに、下手なファンタジーよりも現実感がない

なので、
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コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)

3.9

AIの翻訳性能は日々進化を遂げている。私も依存症になりかけているくらい頼ってしまう。あと何十年かすれば、翻訳家や通訳士はお役御免になるだろうか。そうなったら、本作のような物語も生まれなくなるだろう。>>続きを読む

陪審員2番(2024年製作の映画)

4.3

裁判員制度が始まったとき、世間では否定的だった。SNSでも拒否したいという声が多かった。しかし、私はまったくの正反対。「ぜひ自分を選んで欲しい!」そう積極的に思った。が、未だに名簿記載通知すら送られて>>続きを読む

バッド・バディ! 私とカレの暗殺デート(2015年製作の映画)

3.1

主演のふたりは好きな俳優なので、わりと楽しみにして観た。だが、結論からいうと残念な結果に終わった。これは主演の取り合わせの問題ではなく、単純に映画そのものの出来が良くないからだ。

つまり、ふたりの関
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ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

2.7

前作り『ナイフズ・アウト』はミステリー映画のなかでも特上の出来で、ほんとうに感心させられた。ただ、本作にはさほど興味が湧かなかった。探偵ブノワが出てくる以外、まったく別の作品であろうという気がしたから>>続きを読む

エリアンと魔法の絆(2024年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

童話『いやいやえん』を書いた中川李枝子さん(『となりのトトロ』では『さんぽ』の作詞を担当)は、若い頃にケストナーの『ふたりのロッテ』を読んで、衝撃を受けたという。「児童文学で両親の離婚を扱うなんて!」>>続きを読む

秘密への招待状(2019年製作の映画)

3.8

序盤の早い段階から作品世界に引き込まれたのは、情緒感が溢れているのと、複雑な人間関係が少しずつ明かされていく過程に興味に興味惹かれたからだ。後半に明かされる秘密は予期できなかったもので、いい意味で裏切>>続きを読む

ウォー・ドッグス(2016年製作の映画)

4.3

武器売買を扱った映画は以前にも鑑賞した。が、それはやり手の商人を描いたもので、不快感が強かった。しかし本作はごく一般的な青年ふたりがこの世界でどのようにのし上がっていったかを描いていて、実話だという。>>続きを読む

フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(2024年製作の映画)

3.8

20年近く前、アポロ11号の人類初月面着陸は真っ赤な嘘で、テレビで流れた映像は地球上で撮影された偽物だ——という噂が流れたことがあった。当時の宇宙飛行士は皆、否定したが、真偽はわからない。

でも、こ
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パシフィック・リム アップライジング(2018年製作の映画)

3.8

前作は数年前に鑑賞したのだが、とにかくCGが安っぽくて迫力を感じなかったのと、ストーリーが雑に感じられてしまい、あまりおもしろいとは思わなかった。よって、この続編はスルーするつもりだった。

それを翻
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モアナと伝説の海2(2024年製作の映画)

2.7

前にも書いたが、私は字幕派で、劇場鑑賞は可能な限りIMAXで観たい! という人間である。ところが近所にあるシネコンはこの私に試練を与えた。通常スクリーンで字幕か、それともIMAXで吹替か、という試練に>>続きを読む

女性鬼(2007年製作の映画)

3.8

ヴァギナ・デンタータについての記述に初めて触れたのは、10年以上前に小説のネタを探していたときだった。その本には強姦に対する戒めとして説明されていた。たぶん〝雷様におヘソを取られる〟みたいな感じだろう>>続きを読む

ブリッツ ロンドン大空襲(2024年製作の映画)

3.8

私が子供の頃、よく学童疎開を題材にしたドラマが放送されていた。教科書にも子供の命を守るためだと説明されていたが、のちに本来の目的は将来の人的戦力を温存するためだと聞いて、愕然とした記憶がある。

ただ
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竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

3.6

この作品、アイデアがたいへん素晴らしい! 田舎の地味な女子高生がネット上では大スターになってしまうという現代性。さらには〝美女と野獣〟という古典的な物語を、これも時代に合わせて上手に取り込んでいる。>>続きを読む

劇場版 アーヤと魔女(2020年製作の映画)

3.7

「ジブリもついに3DCGに挑戦か!」とは思ったものの、あまり関心が湧かなかったのは、やはりピクサーなどの高品質な作品には遠く及ばないと感じたからだ。あと、コロナ禍だったこともあって、劇場へは足を運ばな>>続きを読む

思い出のマーニー(2014年製作の映画)

3.6

の少女の思いに、私はとても共感できる! 自分の若い頃を思い出させるからだ。孤独で、すべてを何事も悪い方向に受け取ってしまう。ここまで精彩がなく卑屈なキャラクターはジブリではめずらしいと思う。

ただ、
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コクリコ坂から(2011年製作の映画)

3.5

宮崎監督は映画制作が終わると、疲れた体を休めるために信州にある別荘でひと夏を過ごす。そこには成長した姪が残した少女漫画雑誌が。不揃いなそれを毎夜読んでいるうちに映画化を考えるようになった、という。>>続きを読む

借りぐらしのアリエッティ(2010年製作の映画)

3.6

『借りぐらしのアリエッティ』
私は子供のとき、よくモノをなくした。いま考えても、あれはいったいどこに消えてしまったのだろうと不思議に思う。これに蹴りをつけるための手段として「じつは家に住んでいる小人が
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かぐや姫の物語(2013年製作の映画)

4.2

日本のアニメや漫画の源流は、平安時代の〝絵巻物〟にある——高畑監督は生前のインタビューでそう語っていた。一見、近代になってとつぜん現れたように見えるこれらメディアは、それの進化した形なのだという。>>続きを読む

風立ちぬ(2013年製作の映画)

3.9

もし、音楽を志す人が北朝鮮に生まれたとする。とうぜん、作曲家として生きるならば、首領様や党を称える歌しか作らせてもらえない。心のなかでは彼らの政治に賛同できないと思っていても、その道を選ぶだろう。>>続きを読む

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)

3.8

「もし津波が起こったら、子供たちには『ポニョが来たのかな?』くらいに思って欲しい」宮崎監督は本作について、たしかそうコメントしていた記憶がある。

もし本作が作られる前に東日本大震災が起こっていたら、
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ハウルの動く城(2004年製作の映画)

3.8

かつて宮崎監督が引退会見を行った際、どの作品がいちばん印象に残ったかを聞かれて、本作を挙げた。「原作はゲームの世界。これをどう映画にするかがむずかしかった」と語っていたと記憶している。

私個人は劇場
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ホーホケキョ となりの山田くん(1999年製作の映画)

3.1

人気は宮崎駿に敵わないが、真の監督は高畑勲だと私は思っている。他人の世界を演出するのが監督だからだ。本作も原作者の世界を見事に表現している——のだけど、ただ私はそれ以前にこの企画そのものが理解できない>>続きを読む