zhenli13

マイ・ファースト・ミスターのzhenli13のレビュー・感想・評価

3.6
リーリー・ソビエスキーとアルバート・ブルックスの芝居とビジュアルのコントラストがとても魅力的だし、もうひとつの『ゴーストワールド』といった風情のプロットに惹かれたのだけど、ちょっと残念な感じが拭えないのは脚本のせいか。展開にやや無理があり、魅力的な人物やエピソードがたくさんあるだけに活かしきれてないようなのがもったいない。(当然ながらナードの描写はゴーストワールドの方が上)なにより家族回帰的な、そして年齢の近い異性間での親密さが性愛に結び付くことこそが「自然で正常」であるというところに回帰させるような展開がなんとなく納得いかなかった。
物語のうえではソビエスキーとブルックスはずっと友情で結ばれているということになっているし静かな感動を呼ぶラストではあるけど、ソビエスキーが彼との出会いを成長の糧にして若い男性(ブルックスの息子役)と親密になっていくことを示唆している。49歳のおじさんと17歳のゴスな女の子、親子ほども年の離れた二人の現世での非性愛的友情を物語として成就させないことは、クィアな存在が物語の最後には死亡したり断罪されたりする顛末が用意されていることと似てはいないか。しかもブルックス自身に「自然で正常」な方向へソビエスキーを教唆する役割を担わせている。
近年ようやく「いびつなもの」「普通じゃないもの」がそのままでも存在していられる物語が成立するようになってきたからこそ感じる、納得のいかなさかもしれない。

だからこそ、リーリー・ソビエスキー演ずるジェイにはゴスをやめないでほしかった。 年をとってもゴスで厨二で居続ける女性でいてほしかった。そしてアルバート・ブルックスと非性愛的友情を保って暮らし続ける物語であってほしかった。リーリー・ソビエスキーはとてもとても美しかった。
zhenli13

zhenli13