ジャック・ターナー監督作。
アメリカの作家ジェフリー・ホームズによる1946年発表の小説「Build My Gallows High」をフランス人のジャック・ターナーが映画化した作品で、ロバート・ミッチャムが悪女に翻弄される男を妙演します。
アメリカの小さな田舎町でガソリンスタンドを経営している元私立探偵の主人公ジェフが、NYでの私立探偵時代に関わった一人の美女との再会をきっかけに人生の歯車を大きく狂わせていく様子を描いたフィルムノワールの佳作で、婚約者と穏やかな日々を送ってきた主人公の現在が自身の秘めた“過去”によって次第に呑み込まれていく破滅型の展開が哀感と不条理性に満ちています。
人々の欲望と愛憎と思惑が渦巻く複雑なプロットと総ての元凶と言える一人の悪女の存在が際立ったノワールサスペンスで、事態を冷静に把握しているようで実は泥沼に嵌り込んでいく主人公を名優ロバート・ミッチャムが妙演していますし、自身の欲望と保身を最優先させる衝動的なファムファタールに扮したジェーン・グリアの他人を陥れる悪女としての行状と凛とした美貌のコントラストが鮮烈な印象を残しています。
