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フェリーニ 大いなる嘘つきのleylaのレビュー・感想・評価

3.8
フェリーニの亡くなる少し前のインタビューと俳優やスタッフの証言によるドキュメンタリー。

子供の頃、街にいる奇妙な人、変な人に憧れたという。そのイメージが彼の創作の原点にあるのだと思う。

本物より創造の方が現実に思えることがあるそうだ。海は本物より布で作った海の方が方が彼のイメージでは現実的なのだ。大いなる嘘が彼にとってはリアルということ。

そんな風に撮っているのかと撮影風景に驚いた。脚本はあるけどないようで、台詞も動きもフェリーニがその場で指導しながら、俳優は人形のように動く。ほぼ即興みたいだった。フェリーニは「即興」という言葉は使いたくないと言う。イメージに合うまで妥協しないから周りは大変だろう。

『カサノバ』に出演していたドナルド・サザーランドは、撮影は地獄だったと言う。フェリーニは独裁者で悪魔。彼は人形使いで俳優は人形だと。フェリーニ自身もサザーランドも「霊媒師」という言葉を使っていた。

「芸術家は霊媒師である。魔法に掛けるのだ」

マシーナの言葉をもっと聞きたかったな〜。ロベルト・ベニーニは晩年の作品に出演したからか、子犬のように可愛がられたのだとか。テレンス・スタンプは短編だったから、サザーランドほど苦労はしなかったようだ。マストロヤンニはいつも疲れているから、言われるがまま人形のように動くだけで、それがフェリーニにとっては最高の役者だってスタッフが言ってたのはほんとかな。笑

フェリーニの口から何度「芸術」という言葉が出てきたかわからない。彼にとって映画は芸術で、芸術こそが自分自身なのだろう。ま、芸術家はたいがいエゴイストでナルシストだな〜

差し込まれる過去作品の映像のなんと魅力的なことか。


📌MEMO

『羅生門』が映しているのは空気。

創作の栄養になるのは心理的トラウマ。
自分が神経症なのは神のおかげだ。

「芸術とは、その作品がイキイキとしているかどうか」

「芸術は、人間には宗教心が必要だということを教え込む最高の方法だ。どんな芸術もだ」
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