【寛容な弟】
イーストウッドの『ミスティック・リバー』で殺人を犯したショーン・ペンを誘惑するマクベス夫人役で知られるローラ・リニーが全く違うベクトルで名演技を披露する。アメリカ北部の田舎町を舞台にした薄倖のシングル・マザーを主人公に据えた群像劇の秀作。
弟役のマーク・ラファロが素晴らしい。情けないマシュー・ブロデリックもめっけもんだった。このような心に傷を持った人々が練りなす愛憎モノ、ケネス・ロナーガンの手腕は大したものでさすがスコセッシの『ギャング・オブ・ニューヨーク』の脚本に起用された監督だけはある。
全体的に荒涼とした映像の中で淡々と地味にストーリーが進行していく。やはり『マンチェスター・バイ・ザ・シー』に似ている。最終的にこの監督は「人生捨てたものじゃない」が終生のテーマだったとも言え、自然と涙が出てくる。兄妹の絆と周囲の堕落した人々がドン底から這い上がる、応援歌と受け止めた。💪