ユカリーヌ

CUTのユカリーヌのレビュー・感想・評価

CUT(2011年製作の映画)
3.8
【過去に観た映画】2012.5.6

カンヌ、ベネチアなど世界の映画祭で高い評価を 受けているイラン出身の名匠アミール・ナデリ監督の作品。

観終わったら、言葉を無くしてしまうほど、重く、暗く、痛々しくのしかかる。

監督の「映画愛」が正に痛いほどに全面的に発散されていて、
監督自身を投影した「映画監督の秀二」に扮した西島秀俊も
とりつかれたように、それはそれは強烈なパワーで迫りくる。

だけど、画的にはひたすら 
殴られる秀二が映し出される。

後でパンフを読むと、秀二の殴られる様子が
映画制作の“比喩”であり、
支えてくれる人たちがいてこそ映画ができることを表していると。

いや、まあそれはそうなんだけど……。
そこまで殴られ続けることに固執しなくてもとは思った。

紅一点の常盤貴子は女を消したようなモッサリした服装で
ショートヘアなのに、一種神々しいまでの聖母にさえ見える。
台詞も少ないが、目力で、存在感をかもしだし、秀二を包み込む。


いくつものモノクロ映画が登場し、映画を鑑賞する人たちの笑顔が 映し出され、映画を愛するものには細かいところまで
楽しめる作品ではあるが一種のパラノイアを観続けるのは、
かなりのエネルギーを要する。

白いスクリーンに映し出される映画に秀二の身体が 重なり 揺れるシーンは幻想的で美しい。

3月に京都シネマで
「生きてるものはいないのか」を 観た時、アミール・ナデリ監督はロビーにいらっしゃった。
フツーに座ってて、チラリとお見かけした。
ユカリーヌ

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