【過去に観た映画】2012.5.6
カンヌ、ベネチアなど世界の映画祭で高い評価を 受けているイラン出身の名匠アミール・ナデリ監督の作品。
観終わったら、言葉を無くしてしまうほど、重く、暗く、痛々しくのしかかる。
監督の「映画愛」が正に痛いほどに全面的に発散されていて、
監督自身を投影した「映画監督の秀二」に扮した西島秀俊も
とりつかれたように、それはそれは強烈なパワーで迫りくる。
だけど、画的にはひたすら
殴られる秀二が映し出される。
後でパンフを読むと、秀二の殴られる様子が
映画制作の“比喩”であり、
支えてくれる人たちがいてこそ映画ができることを表していると。
いや、まあそれはそうなんだけど……。
そこまで殴られ続けることに固執しなくてもとは思った。
紅一点の常盤貴子は女を消したようなモッサリした服装で
ショートヘアなのに、一種神々しいまでの聖母にさえ見える。
台詞も少ないが、目力で、存在感をかもしだし、秀二を包み込む。
いくつものモノクロ映画が登場し、映画を鑑賞する人たちの笑顔が 映し出され、映画を愛するものには細かいところまで
楽しめる作品ではあるが一種のパラノイアを観続けるのは、
かなりのエネルギーを要する。
白いスクリーンに映し出される映画に秀二の身体が 重なり 揺れるシーンは幻想的で美しい。
3月に京都シネマで
「生きてるものはいないのか」を 観た時、アミール・ナデリ監督はロビーにいらっしゃった。
フツーに座ってて、チラリとお見かけした。