mikumiku1188

故郷のmikumiku1188のレビュー・感想・評価

故郷(1972年製作の映画)
5.0
高度成長期の昭和に生きる家族の生活を見事に描く作品

山田洋次監督のお得意のヒューマンドラマ。高度成長期の昭和40年代の庶民の生活を描いた感動作です。

瀬戸内海に浮かぶ小島で古い木造の砕石運搬船で細々と暮らしている家族の物語。父親の家業を継いで夫婦で毎日厳しい労働を続けている。次男は家業に見切りをつけて都会で労働者として暮らしている。
木造船の耐用年数は通常10年前後であって夫婦の船は19年も稼働して故障したときの修理費用が莫大な金額に上り夫婦は家業の継続を決断しなければならない時期がやってきたのだった・・・。

倍賞千恵子と井川比佐志演じる夫婦の生活が実にリアルに描かれている。CGを使っていない映像には非常に現実感を見る者に訴えかけていると感じます。小さな運搬船に多くの砕石を積んで沈みそうになる姿で進む船。更に到着した現場に砕石を海の中に沈めるシーン。
倍賞千恵子さんがクレーンを操作して船を大きく傾け砕石を海中に沈める。私には倍賞さんがクレーンを実際に操作しているように見えました。
その他、家族の育った故郷に対する愛情を強く訴え、笠智衆さんの言葉でそれを表現しています。笠智さんに触れれば語りつくされているでしょうが本当に凄い存在感です。孫を連れて島の採石場跡地で故郷に対する想いを孫に伝えるシーンは表情に物凄いものを感じました。
しかし、私には笠智さんの姿は老人の姿しか記憶にありません本当に凄い俳優さんです。

時代の変化の波に埋まってしまうような家族の生活を淡々と描いて美しい瀬戸内海の風景の中で、人々が懸命に生き抜く姿を描いた感動作です。