半兵衛

ブラディ・サンデーの半兵衛のレビュー・感想・評価

ブラディ・サンデー(2002年製作の映画)
4.4
『血の日曜日事件』は歴史が好きだったくせに不勉強で、「ゴルゴ13」や「マスターキートン」で取り上げられた際に何となく知った程度であった。

しかしこの映画を見て事件の重大さに衝撃を覚え、21世紀になってもそれが尾を引いている理由を理解した。そして映画はデモに参加する北アイルランド市民たちとデモ鎮圧に参加したイギリス軍の行動を冷徹な視線のまま平行して描くことで、話し合う隙間がどんどん拡大してお互いの行動が一方的になり、その差異が埋まらないまま事件が起こる姿を生々しく見ている人に突きつける。容赦なく市民を殺害するイギリス軍、パニックになる市民…こんなに背筋が凍る瞬間を味わえる映画はなかなか無い。

同時に一方的に射撃してデモに参加した一般市民を殺害したくせに、体面を取り繕い死体に爆弾を入れたりして「テロ」扱いにしてしまうイギリス軍の行為に人間の醜さというものを突きつけられて戦慄した。

奇しくも先日アメリカの議会にトランプ支持者のデモが侵入し、数人が射殺されるという似たような事件が起きただけにもっといろんな人に見てもらいたい作品。
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