CHEBUNBUN

55年夫妻のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

55年夫妻(1955年製作の映画)
3.5
【ハリウッドミュージカルに愛をこめて】
動画版▼
https://www.youtube.com/watch?v=NFLUOi_iWTI

自宅からインド映画の巨匠グル・ダットDVD-BOXが出土したので観た。グル・ダットは一貫してハリウッド映画をローカライズしていった監督といえる。そのローカライズの方向性がどこか『君は出世ができる』や東宝版『サザエさん』など日本のミュージカル映画全盛期を彷彿とさせるものがあった。

アルフレッド・ヒッチコック『見知らぬ乗客』を彷彿とさせる、テニス場での運動から物語は始まる。テニスにおいて、観客は球の行方を追う。統制の取れたマスの視点の波に美しさを感じる。ロケーションの中で描かれる人間の運動がひたすら美しい。プールの場面では、飛び込む人々を奥行方向と垂直方向ベクトルを分解して描き、手すりといった細かいオブジェクトも身体表象のギミックとして取り込む。オフィスでの恋歌では、机を巧みに使い頭隠して尻隠さずなバレバレの恋愛を紡いでいくのである。映画自体が『キートンのセブン・チャンス』をベースとしているだけあって、運動に力が入っているのである。一方で、ミュージカルが苦手な人にとって障壁となる、歌によって停止する物語なので、たいした話ではないのにやたら上映時間が長い。グル・ダット映画はこの傾向があるので、好き嫌いは分かれるであろう。個人的に、物語面では退屈なことが多いのでグル・ダットはそこまで好きではない。
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