ヴぇる

キャタピラーのヴぇるのレビュー・感想・評価

キャタピラー(2010年製作の映画)
2.6
設定の時点でインパクトは強く、さらに戦争に絡めている点においてどこまで重く深く掘り下げるのかに興味を持っての視聴になったが、予告編のインパクトほどの内容では無かった。

基本的に人の内面を映し出して行く形の映画なため、時代背景のセットと衣装を用意しただけで出来上がる邦画によくある低予算で仕上がっている。余りにもお粗末だったのは、フラッシュバック時のシーンとSEだろう。本当に21世紀の映画かと確認してしまう程だ。またセリフも心理描写も深みはそこまで無く映画に入り込むことは中々難しいかもしれない。戦争映画だからといって諸手を挙げて思いを馳せる事を前提に作っているのであればそれは怠慢であり、この映画にそこまでの力が無かったが故だろう。

脚本で良かった点は介護する側の嫁の気持ちが晴れる展開が村の人間の褒め言葉であるシーンであり、対になる旦那は軍神と拝まれるのは本人ではなく勲章のみ。この人間模様は非常に面白いし、後に寺島しのぶの狂っていく瞳と演技は非常に引き込まれるものがある。

ただ、視聴中何度も頭に浮かんだのがこの時代設定にそこまで意味があったとは思えない。反戦は少しあるがそれは申し訳程度であり、強いメッセージがある訳でもなく、必要性を感じないのだ。上記の村の人々が軍神を崇めるという所くらいなので設定を変えても作れそうだなと思ってしまった。

ラストシーンは悪くないが終戦という日にその選択をした動機はそこまで強いものに思えない。

総評としては、地上波の2時間ドラマとさして変わらないレベルの費用で作られたインパクト性重視の映画と言える。教育的でもなく、強いメッセージ性がある訳でもない戦争という皮を被った娯楽映画に思えた。
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