櫻子の勝手にシネマ

キャタピラーの櫻子の勝手にシネマのレビュー・感想・評価

キャタピラー(2010年製作の映画)
4.0
寺島しのぶの演技が凄まじい。
むくむくと自身の内に沸き起こる屈折したナルシズムの表現力は素晴らしいの一言。
この映画で彼女はベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞している。

出兵前から妻のシゲ子に対して『子供が産めない役立たず』と罵り、平気で暴力を振るうようなゲスの極みのような男、久蔵。
おまけにこの久蔵は、戦地の中国で女性を襲いレイプして殺すというとんでもない戦争犯罪を犯しているのである。

こんなゲスの極みのような夫が四肢を失い芋虫状態で帰って来たら、シゲ子じゃなくても『いーもーむーしごーろごろー』って歌いながら虐めるでしょ。
少なくとも私ならそうする(`・ω・´)ゞキッパリ
絶対世話なんてしてやんない(笑)

でも、シゲ子が卵を久蔵の口に無理矢理押し付けるシーンで、その後ハッと我に返り久蔵を抱きしめるのだが、その時のシゲ子の心情が伝わってきて少し切なくなった。
女の中に宿る『母性』というものなのだろう。

この映画は異色の反戦映画だと思う。
戦争とは、人間が人間を犯し、切り刻み、焼くことだ。この作品はそう主張している。

戦争に、正義なんてない。