真一

キャタピラーの真一のレビュー・感想・評価

キャタピラー(2010年製作の映画)
2.7
 大戦下の1944年、日本の山村。負傷した陸軍少尉が、中国戦線から帰還した。手足がもげ、顔半分は焼け爛れ、耳も聞こえず、呻き声しか出せない。「芋虫」と化した少尉の世話をするのは、妻(寺島しのぶ)だ。外出すれば「生ける軍神」の妻として崇め奉られるが、家に戻れば介護地獄が待ち受ける。そして異形の性生活。妻はだんだんと狂気に取り憑かれていくー。

 本作品は、江戸川乱歩の短編小説「芋虫」をベースとした密室劇。死地に送り込まれた兵士だけでなく、銃後の女性の尊厳も踏みにじる軍国主義の野蛮さを浮き彫りにしています。少尉が中国で現地女性を強姦し虐殺する回想シーンもあり、強い反戦思想を伺わせます。

※以下、ネタバレ含みます。

 ただストーリーは単調。全体で90分弱ですが、長く感じました。寺島しのぶの体当たり演技も、あれほど繰り返されると、やはり退屈します。強姦虐殺の回想シーンも多すぎました。15分程度の短編映画にすべきだったと思います。

 小説「芋虫」を題材とした映画では、むしろ学生監督による短編アニメ作品「芋虫」がお薦めです。江戸川乱歩の怪しい世界観を、忠実に再現しています。時間がある方は、ぜひ本作品と見比べてみてください。
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