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天国は待ってくれるのandesのレビュー・感想・評価

天国は待ってくれる(1943年製作の映画)
4.1
プレイボーイの恋愛一代記から人間讃歌まで突き抜けるルビッチの快作。なにより「人間は大きく変わらない」ことが貫かれているのが素晴らしい。そりゃそうだ、女好きが急に一途にはならない。それを否定せずにコメディタッチで見せつつ、ふとした瞬間に人生のキツさ(本の使い方が秀逸、老いも良いアクセント)をほのめかすのはお洒落だ。
人間は非常に複雑な生きもので、「品行方正」だけでは物足りない。そもそも恋愛なんて(結婚さえも!)倫理や常識だけでは通用しないのである。好きに理由なんて合ってたまるか、それだけに「ぽっこりお腹」のエピソードが泣けるのだ。
さて、軽妙な台詞はもちろん演出も冴えている。ケーキのロウソクが増えて消せなくなるのなんか上手い。あと、「死」を直接描かないのも良い。あくまでモノローグで処理される。そもそも主人公は今死んでる状態で地獄の手前で閻魔と話しているので、画面上「死」が曖昧である。劇中、死の悲しみは「会えない」ことで表現される。そして、ラストでは「会える」ことを匂わせる、見事である。
キャストもハマっている。ドン・アメチーは憎めないし、ジーン・ティアニーは女神降臨の美しさである(老け役も素晴らしい)。甘口に見えて、裏にはしっかりキツさもある。名作。
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