はる

縞模様のパジャマの少年のはるのレビュー・感想・評価

縞模様のパジャマの少年(2008年製作の映画)
4.2
言葉にならない悲しい映画。

映像が非常に美しく、2008年公開というのは驚いた。もっと最近の映画かと思っていた。
特に子供の目線で見た世界の輝きを意識して撮影されているように感じた。
演技は全出演者素晴らしい。一部子供の台詞が大人っぽくて違和感もあったが、そこまでは気にならない。
昨年公開の『ジョジョ・ラビット』にも影響を与えているのがわかる。

さて、何を書いてもネタバレになってしまうが...。


本作は史実を元にしたフィクションだが、映画内で起きていることは、実際のホロコーストを前提とした勧善懲悪の物語と捉えられなくもない。

悲しいかな歴史は繰り返してしまうものである。ホロコーストという、同じ人類として恥ずべき歴史を、今後繰り返してしまわないと断言することは誰にもできない。

悪いことをすればそれが自分に返ってくる。子供でもわかる単純な理屈である。
そして差別は悪いことだと誰もが認識しているはずなのに、世の中の言説は差別や偏見に塗れていて、当人がそれに気づいていないことも多い。

子供が辛い目に合うことを望む人もいないだろうが、そうでもしないとお前達はわからないだろう、と、監督や原作者が必死に訴えてくるのが伝わってくるような映画であった。

SNSの普及により、現代人の人権リテラシーの低さが露呈して久しい。
そういった言動は、まさに我々に、思わぬ形で返ってくるのではないかと思わずにはいられない。
改めて身の振り方を考えてみるべきだろう。
はる

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