こぅ

デッドライン〜「恐怖の極限」とは何か?あるホラー作家の衝撃の体験!のこぅのレビュー・感想・評価

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'24 春のホラー/ミステリー祭③

「私は身近なものを比喩で表現している
その表現手段としてホラーを選んだが
アーティストとして何を選ぼうと自由だ」

原案/監督による、ホラーと括るよりもホラー作家の苦悩を描いた厳密には【スリラー】。

Blu-rayこぅ入1.1年越し開封鑑賞の巻〜


ホラー映画専門の脚本家、スティーヴン・レッシ―(スティーヴン・ヤング)、彼が脚本を担当した映画は彼の名前だけで大ヒットするほどの人気スターになっていたが、周囲から金儲け主義のグロ映画とこき下ろされていた。
次回作の原稿をしきりに催促されるものの、スティーヴンの創作活動は3人の子供のせいで中々捗らず、また妻との関係もうまくいかずストレスも溜まる一方だった。
そんなある日、TVで放映されていたスティーヴンの出世作「死刑執行人」を子供達が観てしまい…。


★脚本
勘違い起こしそうなジャケ写。
物哀しいテーマ曲が先ず良い。
タイトルの出し方/タイミングも良い。
冒頭、
何気ない、作家の家族との一見幸せそうな朝の一幕。
いきなりインサートされる 尋常じゃない血量のシャワー映像 で、本作のジャンルが絞られる。
その後もスティーヴンの過去作なのか、妄想イメージなのか、不明の断片的グロいシークエンスがいくつかインサートされる。
これらに何か意味を持たせているのだろうか⁈と観進めた、、。

仕事に追われ/没頭し、子供達/妻、エリアス(シャロン・マスターズ)との溝が深まるストレス。
処女作大ヒット、
以降も連発ヒットを飛ばすがスランプ、そろそろホラー以外も書きたいのにプロデューサー/ニーズの求めるものは まだまだホラー というストレス。
立ち会う映画撮影では、
主演女優、ダーレン(ジーニー・エリアス)とウマが合わず毎度対立/喧嘩や、大作家/ヒットメーカーにならないと ワガママ はまだ言えないという状況/事情はリアルだろう。
勿論、ホラーに対する反発も喰らう。
妻とやり直したいのに拒否られ、
スティーヴンが病む発端になる ある事件 もホラー作家たる自業自得の皮肉だ。

終盤は、
「ホラーの最高傑作を生み出してやる!」
スティーヴンもぶっ壊れるしかない。
その結果が、
虚実ハーレムクライマックスとラストだ。

OP曲の歌詞ありED曲(エヴァーラスティング・ラヴ/ドウェイン・フォード)と相まって哀しい余韻を残す。

★総評/見どころ
ホラー作家=スティーヴンという主人公の名前からもS・キングの半生/リアルな苦悩物語に見えてしまう、或いはそう観ても大きく違わないだろう。
また、
ホラー作家が主人公というだけで、ジャンルは厳密には、ホラーとは呼び難い。
作家のストレス/家族絡みという観点から【シャイニング】の影響も著しいが、実質的ホラー色は無い。

一見無差別なようで、意味を持つ、
奮発した血量の シャワー溺死 から始まり、妊婦の出産手術の吐血、挿入されるいくつかのグロの特殊効果映像は、見どころ。
逆に言えば、
普通に作家苦悩物語で終わるシンプルな話に、スティーヴンの 殺戮グロ映像 挿入でカバーしたのだ(この映像の持つ意味/意図が分かり難かったのは難と指摘)。

本作で、
ホラーを決してフォローしていない/出来ないのもホラーのホラーたる 皮肉な宿命 だ!
こぅ

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