カント

ル・アーヴルの靴みがきのカントのレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
3.6
フランス映画。貧困の老人と密航してきた黒人少年の触れ合いを描く。

ノルマンディーの港町ル・アーブルで靴磨きをしている老人マルセル。愛妻アルレッティ、愛犬ライカと細々と暮らす日々。しかし妻アルレッティは不治の病に罹ってしまう。

ベトナム人のチャング。パン屋のイヴェッティおばさん。飲み屋のクレールおばさん。気の良い隣人達。

▼アフリカ、ガボンのコンテナから10数名の密航者が発見された。逃げ出した黒人少年イドリッサ。ル・アーブル署の敏腕刑事、モネ警視がイドリッサ少年の足どりを追う。

▼岸壁の海面に隠れる黒人少年を見つけた老人マルセルは、そっとチーズサンドを置いておく。少年はマルセルを頼り、モネ警視に見つからないよう息を潜めるのだが…。

▼この老人は何故、黒人少年イドリッサを、法を犯してまで匿おうとしたのか?
本作を見て、最近のニュースを思い出した。
2018年3月/モト冬樹がカラスに襲われ弱った雀を保護。懐いてしまった雀をSNSに投稿して賛否両論。都の条例では雀(野生動物)をペットとして飼育するのは犯罪なのである。

老人マルセルの心境は、乗りかかった舟だったからか、気まぐれか、情が移ったのか……それとも、少年への善行が妻を救う福音をもたらすモノと考えたのか。
結局、老人マルセルの行動規範も、モト冬樹が雀を保護したのも、人としての情なのか。老人マルセルが、フランスが抱える移民問題に反抗的だった事も考えられるけれど……単純に目の前の困っている少年(雀)に手を差し伸べるのがマルセルとモト冬樹に共通する「生き方」だったのでしょう。

パン屋のイヴェッティおばさんも、飲み屋のクレールおばさんも、通報せずマルセルとイドリッサを助ける所が好き。
通報した隣人も、けして悪い人では無い。法の上で悪いのは老人マルセルだと言う事を忘れてはダメですよ。
……よって、いつの間にか鑑賞者(私)も、モネ警視も、イドリッサの身の上を案じる共犯者になってしまっているのです😅

▼チャリティーコンサートのリトル・ボブとミミの夫婦が最悪😅マルセルの妻アルレッティが、とってもチャーミングでした✨

▼類似のテーマで「バティニョールおじさん」って映画が有ったけれど…そっちの方が優秀。
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