デヴィッド・ヒュー・ジョーンズ監督作。
舞台化もされたアメリカの女性作家：ヘレン・ハンフによる1970年発表の自伝的書簡体小説をデヴィッド・ジョーンズが映画化した人間ドラマで、書籍の売買と併せて文通を重ねていく英米男女の交流を描きます。
原作者であるヘレン・ハンフの実話を基にした穏やかな人間ドラマの愛すべき佳作です。NY在住の女性劇作家：ヘレンとロンドンで古書店を営む英国紳士フランクとの20年以上に及ぶ親交を描いた人間ドラマで、お互い顔も知らないまま文通による文学談義や近況報告によって親交を深めていく二人の半生を淡々と見つめていきます。
直接会わずとも心の深い部分で繋がっていく二人の男女を、戦後から1960年代にかけての英米の世相＆歴史を背景に描いた人間ドラマで、メールやSNSで一瞬でやり取りできる現代とは違って手紙の交換に日数がかかる“もどかしさ”がノスタルジックな趣きを感じさせますし、相手を思いやる真心の尊さ、美しさが静かに浮かび上がってきます。
そして、(画面上では共演しない)主演のアン・バンクロフト＆アンソニー・ホプキンスの名優二人の円熟の演技がいぶし銀の輝きを放った人間ドラマで、機知と文学性と時々毒舌を含んだ二人の文通でのやり取りには知的面白味が溢れています。
