てんあお

ブロンドの恋のてんあおのレビュー・感想・評価

ブロンドの恋(1965年製作の映画)
4.3
※ 新文芸坐シネマテークVol. 12「チェコ・ヌーヴェルヴァーグの真珠たち」にて鑑賞。日本語字幕付き、35mmフィルムでの上映。

人づてに、題名やあらすじは聞いたことがあるけれど、ちゃんと、劇場で観たのは初めて、という作品。正直いうと、作品毎に好き嫌いのある、個人的には食わず嫌いのあったミロス・フォアマンの作品。自分が映画に興味を持つ遥か前から、評価されていた映画監督。けれど、彼の作品だから、といって好んで観ることはなかった。

ある程度、意識的に映画と向き合える今だから、その価値と、凄さがわかる作品だと気づく。加えて、洒落たコメディではあるものの、田舎街の「年頃の娘」の恋愛にまつわる苦い挫折をのさまをみて感じ入るものがあるとすれば、ある程度の経験を経ないと、そこに寄り添う優しい気持ちを持つ余裕などなかったと思う。監督30台前半の作品、その一点だけでも、考えるほどに頭が下がるおもいがする。

ともすれば、アンドゥラの煤けつつある純朴さに『アマデウス』のコンスタンツェの姿を重ねみたりして。観客の目にも、どこか忘れがたくあるキャラクターには、大事に温められた型があるものかと、考えてみたりする。

その一方で、ボサついた毛量の多い髪にも、向こう見ずな行動力にも、若さの刹那さを見いだしては憧憬を持って見つめていた。そんな大人ずきのする、純朴さと世間に揉まれることの苦さを、真っ直ぐに味わいたい。その洒落た側面をサブカル方面からみると、何となく「渋谷系」と呼ばれていた人たちの姿が視界にちらつきもするけれど、そういう野暮な考えは棄てて、今の時代に出逢い直す事ができたら。

時折こんな具合に、食わず嫌いだったものと向き合うのも良いことだと感じる。今の時点で、自分にはまだ何本か、未見のミロス・フォアマンの監督作がある。しあわせなことだと思う。
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