勝沼悠

101日の勝沼悠のレビュー・感想・評価

101日(2010年製作の映画)
5.0
 6組の夫婦が180日間、外にでることなく一つの家で過ごすリアリティ番組「ハウスト」が始まった。しかし、その直後から世界は少しずつ世界大戦へと向かっていく。外の世界を知らない参加者達の生活を映す番組はやがて大人気に。核戦争の気配さえ漂いだし、テレビ局は参加者達を眠らせ地下シェルター内に作った部屋へ移送させる。番組はどんどん人気を増していく。そして101日後、ついに核兵器がザクレフを襲う。。。
 クロアチア発の異色の映画。

 世界戦争にひた走る中、多くの人が何も知らないで平和な世界で生活している参加者達の様子を見ることで現実逃避していく。途中で失格になり外に出た参加者が真実を知って言う「もうこれ以上誰も外に出さないでほしい」という言葉の衝撃。この現実逃避は狂気である。
 しかし、この(劇中の)プロデューサーとこの映画自体は、世界戦争へと進んでいく現実こそが狂気ではないかと投げかけている。この映画の大半が閉じ込められた参加者目線ではなく、閉じ込めている側のスタッフ目線なのはその為だ。

 そしてこの映画はつい20年前に泥沼の内戦を経験したクロアチアの映画なのである。じょじょに戦争に傾いている状況、すっかり戦時中になっている状況を知らせる細かい描写が本当にリアルでうまい。
 自分達の世界がじょじょに戦争という非日常に侵食されていくこの映画の現実は、多くのクロアチア人にとって実際に体験したことなのだ。これを見たクロアチア人の方々はさぞかし胸をえぐられた思いがしたことだろう。

 時間軸があっちいったりこっちいったりして、二つの現実は最後に統合を見せる。そこで冒頭のシーンが180日後ではなく101日後であったことが分かり、色々なことが納得できる。このプロットは相当に練られていてすごい。

 果たして狂気は現実逃避することだろうか、それとも破滅へと突き進むことか。私は戦争こそ狂気であると言い続けたい。
 この映画は絶対見るべき映画である。間違いなく私が今まで見た全ての映画の中でベストテンに入る。
勝沼悠

勝沼悠